行き詰った林業を再構築、「分業」から「連携」へ

林業における各段階の作業は、昔から分業体制が確立していた。一般に森林の土地所有者と、そこに植え付けや草刈りなどをする造林業者、そして伐採搬出する業者は別である。さらに製材業者、プレカット業者、そして住宅建設などの工務店まで、それぞれ分業で行われるのが通常だった。(森林ジャーナリスト・田中 淳夫)

造林、伐採、製材、建築など各部門の技術はまったく違うので、分業し専門化した方が担当者の習熟が進む上、生産効率を上げられるからである。しかし、同時にそれは分断を生みがちだ。林業を営む人は山の木がどこで何に使われるか知らないし、建築家は使用する木材がどこの山の誰が育てたのかまったく気に留めなくなった。

結果として林業家は、需要を無視して自分の都合で木を伐る。工務店は、木材の特性を知らず必要な部材だけを購入する。だが、そうしたバラバラの動きが在庫ロスや機会ロスを生み出し、また各段階のマージンが積み重なって利益をすり減らした。

さらに利益を不当に奪われたとお互い疑心暗鬼に陥る。昨年から続く材価高騰のウッドショックは、その結果引き起こされた面も強い。そこで途切れた情報の糸を紡ぎ直そうとする動きが起きている。

工務店とともに林業家が製材も

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田中 淳夫(森林ジャーナリスト)

森林ジャーナリスト。1959年生まれ。主に森林・林業・山村をテーマに執筆活動を続ける。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)『鹿と日本人』(築地書館)『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(ともに新泉社)『獣害列島』(イースト新書)などがある。

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キーワード: #SDGs#林業

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