オルタナ・テシスとは
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「なぜ」を5回繰り返すというのは、トヨタ流メソッドの一つです。何らかの問題が起きた時に、「その問題はなぜ起きたのか。そして、その原因が起きたのはなぜか」というプロセスを延々5回繰り返せば、問題の本質が見えるという考え方です。(曽田昌弘)

トヨタ流メソッドはダイバーシティを認め合う契機に

さて、その「なぜ」を5回繰り返すのが得意なのは誰でしょうか。トヨタの社員は、みな訓練を受けるのでしょうが、訓練をしている自覚がないのに、その訓練ができてしまう人たちがいます。

それは母親たちだと思います。子どもの成長過程で、3~4歳ごろに「なぜなぜ期」がやってきます。何でもかんでも「なんで?」と聞く時期ですね。私の子どもも今まさにその時期で、一つ一つ答えるのはなかなか骨が折れます。

残念ながら、雑な回答をしてしまっていることも多いです。私は父親ですが、子どもの「なぜなぜ期」の相手をする場面が多いのは、父親よりも母親でしょう。

つまり、母親は多くの場合、「なぜ」という問いが5回繰り返されてそれに回答するというトレーニングを、知らず知らずのうちにしているのです。(もちろん、しっかり子育てに参画している父親たちも同様です)

ならば、それをビジネスにも使わない手はありません。これこそが男女の雇用機会が比較的均等な国が強い理由なのかも知れません。おそらく、海外でも父親より母親の方が、子どもの「なぜ」に付き合うケースが多いと思います。

その無意識のトレーニングを積むと、職場復帰した時点で、トヨタ流メソッドとほぼ同じトレーニングができてしまっているわけです。

そして、このことは「これからの人類の希望」になるかも知れません。多くの先進国は少子高齢化で、人口減少フェーズに入りました。そこで、子どもを産んだ上で職場復帰した方が、一皮むけて強みになるのだとしたら、仕事への意欲や成果と、人口減少を防ぐ効果が一挙両得で得られるのです。

これにより、経済活動と人口ピラミッドの回復が同時に進めば、人類の繁栄につながります。

人は誰しも十人十色、得手不得手があります。それぞれが、それぞれの持ち味を生かせる社会は絶対に強くなります。単身者には単身者の、夫には夫の、妻には妻の、父親には父親の、母親には母親の、祖父には祖父の、祖母には祖母の、子供には子供の、男性には男性の、女性には女性の、LGBTQにはLGBTQの強みがきっとあります。

さらに、そういった属性による多様性に限らず、個体差としても多様な強みがあります。強みがあれば、もちろん弱みもあるでしょう。しかし弱みは、それについて強みを持つ別の人が補ってあげれば良いのです。これこそがダイバーシティではないでしょうか。

皆が同一なのではなく皆が違う世界は、それぞれが強みを生かして、それを弱みとしている人を助けると同時に、自分にも充実をもたらす幸せな世界なのだろうと思います。

そんな幸せな世界の実現のために我々は何をすべきか。まずは、自分とは異なる属性の人は、自分にはない強みを持っているということを意識しておくことでしょう。皆が互いにそう思える世界を夢見ます。

曽田昌弘(そだ・まさひろ)
メーカー勤務。1979年滋賀県出身。神戸大学法学部卒業。