オルタナ・テシスとは
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ロシアによるウクライナ侵攻を「戦争」と位置付けるかは別として、侵攻から早くも4カ月が経過しました。この間、プーチン大統領の歴史認識や世界観では、生誕350年を迎えたピヨートル大帝まで登場し、この侵攻を正当化しようとする姿勢には、少々驚かされると共にその愚かさに呆れました。(松田雅一)

世界の終わりまで「残り100秒」

日本においても、特に江戸っ子にとっては、徳川や明治時代の古き良き時代を懐かしむ風情に思うことはあるとしても、独裁者が現れて、改めてその時代の復活を目指すことはあり得ないのではないでしょうか。

戦後の日本人が、戦勝国の教育指導の下、従順に無思想・無帰属な日本社会を形成してきた功罪が関係していることも確かではあります。

話が脱線したついでに、「ロシアだけが(というよりはプーチン大統領だけが)過去の歴史の栄光を追い求めているのではない」ことを憶えておく必要はありそうです。

そして、現代の世界の秩序も過去の歴史を踏襲していて、世界秩序の象徴でもある国際連合も75年以上経過した第二次世界大戦の戦勝国と敗戦国の関係を秩序の土台に据えていること。プーチン大統領だけが時代錯誤に陥って単に血迷っているわけではないことも忘れてはなりません。

さて、本稿の本題はウクライナ侵攻が「世界終末時計」を何秒進めるだろうか、です。世界終末時計は、米国の原子力科学者会報が定期的に発表しているものです。

「人類が滅亡する「地球最後の日」を午前零時とし、それまでの残り時間を象徴的に示す時計」で、冷戦初期の1947年に残り7分からスタートしました。今年1月21日の発表では過去2年と同様、「終末まで残り100秒」と発表されています。

その理由として、米国とロシア、米国と中国の緊張が続き、いずれも核兵器の近代化を進めていること、北朝鮮やイランでも核の危険が増していること。そして、新型コロナウイルスの変異とともに気候変動への各国対策が目標を達成できていないことを挙げています。

この各国の気候変動対策の目標達成への遅れに比して、ロシアのウクライナへの侵攻による世界へのその影響度は、相当に甚大なものではないでしょうか。

もちろん、世界中で起きている内戦や騒乱も同様ではあります。しかし、ウクライナへの侵攻の様子は日々世界が注目する中でリアルタイムに拡散しています。気候変動による終末時計への影響だけでなく、SDGsの各テーマに与えている深刻な影響度合について、私たちはもっと過敏に反応すべきではないでしょうか。

すなわち、SDGsの17のテーマ全てに対する、これまでの地道で真摯な取り組みに対して、実質的な影響(CO2の排出、食糧危機、環境汚染、貧困層の増大、就学機会の略奪、生命の危険健康被害など、SDGsにおける悪影響)もさることながら、世界中で心理的に大規模なリセッション(景気後退)を引き起こしていないでしょうか。

軍隊の規模、使用車両・兵器の物量・質が不明で、影響度を評価できないことは確かであるにせよ、誰もが憂慮しているこの深刻な影響について、その影響の大きさを何ら示されないまま見過ごすべきではありません。

国際連合が機能していない現状において、どうあるべきでしょうか。ウクライナ侵攻が世界終末時計を何秒進めるかは、「原子力科学者会報」にとっても計算の難しい難問であると推察されます。

あくまで仮定の話ですが、毎年1月に発表する残り時間を例外的に緊急に発表し、最小単位である1秒進めたと、世界にそしてロシア国民に向けて発表する意義は小さくないと考えます。

これも仮定の話ですが、国際的な研究機関「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」は、毎年6月に「SDGs達成度国別ランキング」を発表しており、最新の2022年版でロシアは45位でした。

これを従来とは別の評価方法、例えば世界の取り組みを台無しにしたとして、例外的に緊急にロシアを最下位の165位に落としたとしたら、同じく世界にそしてロシア国民に向けて発表する意義は小さくないと考えます。

世界にそしてロシア国民に向けて発表する意義は小さくありません。世界の秩序を取り戻すためにも、政治家や専門家などから、さまざまな問いかけを期待したいと思います。

松田雅一(まつだ・まさかず) 
静岡大学法学科卒業、東レエンジニアリング株式会社入社、海外関係会社(韓国)の社長を4年間歴任後、同社取締役、常務取締役を9年間担当。2020年3月第1回CSR検定1級合格(CSRストラテジスト)2022年6月役員退任(専務理事として、総務人事部門長、CSR部門長継続)