いま世界的に解決が急務とされているプラスチック問題。日本の廃プラ発生量は、アメリカ、中国に次いで世界で3番目であり、いままでのリサイクル中心の政策からそもそもの発生量を減らしていく抜本的なアプローチが求められている。しかし、プラスチックの海で苦しむ生き物たちと、普段の自分たちの生活が結びつかない人も多いのではないだろうか。ポイ捨てなどせずに、きちんと分別して捨てている。ちゃんとリサイクルされているはずだから大丈夫だろうと。本稿では、日本のプラスチック問題の現状と解決のためのアプローチをプロダクトデザインの視点から考察していきたいと思う。(伊藤 恵・サステナビリティ・プランナー)

高リサイクル率の誤解

まず、リサイクルの定義についてみていきたい。プラスチックのリサイクルには、廃プラスチックからプラスチック製品を再生する「マテリアルリサイクル」と、化学原料に再生する「ケミカルリサイクル」という2つの方法があり、処理過程でエネルギーの消費が少ないマテリアルリサイクルのほうが望ましいと言われている。

これに対して「熱回収」とは、廃プラを焼却して生じた熱エネルギーを二次利用する手法のことで、資源を再利用するリサイクルとは異なる位置づけである。しかし日本では、「サーマルリサイクル」とも呼ばれ、リサイクルのひとつとして捉えられてしまっていることも多い。

熱回収は焼却処理のため地球温暖化の促進にもつながっており、本当の意味でのリサイクル率を上昇させることが必要だ。日本の廃プラ処理の内訳(2018年)は、発生した891万トンの廃プラの内、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルをあわせても全体のわずか28%。それに対して熱回収は56%と一番多い割合を占めている(※プラスチック循環利用協会 2019)。このリサイクルと熱回収をあわせた数値を有効利用率と政府が表現しているため、このすべてがリサイクルであるという誤解をしばしば招いている。

このように日本では、本当の意味でのリサイクルが、実は進んでいないということがわかる。そして、そもそもリサイクルにおいても処理や再加工にはエネルギー消費が伴うため、プラスチック問題において一番優先されるべきは、そもそもの使用量や廃棄する量をできるかぎり減らしていく「リデュース」だとされている。使った後にどうするか考えるのではなく、

もっと川上の使う前にどう減らすかを考える。これからはさらに一段上のステージでの取り組みが求められているのだ。

リデュースを実践したプロダクトデザイン

プロダクトデザインにおいてリデュースを実践するためには、商品の品質や安全性を損なわないことはもちろん、使いやすさも担保する必要がある。

特に日本では衛生面の要求が高く、日本を訪れた人はスーパーに並ぶ野菜がひとつひとつプラスチックの袋に入れられている光景に驚くという。日本でも飲料メーカーなどを中心にラベルレスのペットボトル飲料の発売が相次ぎ、リデュースを目指したプロダクトが盛り上がりつつあるが、これからはもっと大胆でより抜本的な削減が求められていくと思われる。そこで先進的な取り組みがおこなわれている海外の事例を紹介していく。

「食べられる容器 NOTPLA」

「食べられる容器 NOTPLA」

イギリスのスタートアップ企業が開発したのは、海藻や植物由来の成分を使った”食べられる容器”。最大6週間で完全に生分解されるので、飲料やソースをはじめとした日常的に使われる容器の代替品としての役割が期待されている。

NOTPLA をコーティングしたテイクアウト用のランチボックスや、熱いお湯に溶けるフィルムなども開発し、より多様な使い方が可能になっている。さらにユニリーバやフードデリバリーサービスなどとパートナーシップを組んでおり、より活動の範囲を広げているところだ。

環境へのやさしさや使い勝手はもちろん、無駄を一切排除した洗練されたデザインが評価され、世界最大の広告賞であるカンヌライオンズの2021年のデザイン部門でグランプリも受賞している。

■「シャンプーを再定義した The Dissolving Bottle 」

「シャンプーを再定義した The Dissolving Bottle 」

シャンプー容器をなくすためのシャンプーバーは、いくつか市場に出回っているが、使い勝手や判り易さの側面からいまだに普及はしていない。そこでThe Dissolving Bottleは剤形自体をシャンプーボトルのカタチにして、必要な情報も刻印をできるようなデザインを考案した。さらにこのデザインをオープンリソース化して、3Dプリンターで誰でも製造可能にしたことで、大企業だけでなく小さな宿泊施設などでも導入可能になり、実施国の宿泊施設でのシャンプーボトル削減に大きく寄与をした。こちらもカンヌライオンズでの受賞実績がある。

いま日本では4月に執行されたプラ新法の影響もあり、各企業がプラ削減の企業努力をしているが、使い捨て容器のプラスチックの使用量を減らすなどの小さな変化ではなく、そもそも容器を使い捨てにしない、容器自体をなくすといった抜本的な変化に移行していくことが望まれる。そのためには、上記に紹介したような消費者の利便性を損なわないデザインのアイデアと、それを受け入れる消費者心理、提供する側の企業体制という3つが揃うことが必要になってくるだろう。