日本初、NPOをDAOに 資本調達の選択肢広がる

記事のポイント
①日本で初めて非営利組織を「DAO」化するプロジェクトが始まった
②株式を発行できないNPOは事業規模を拡大するには大口寄付に頼っていた
③NPOがトークンを発行できるようになれば資本調達の可能性が広がる

起業支援を行うガイアックス(東京・千代田)はこのほど、日本で初めてブロックチェーン技術を使ってNPOの組織形態を「DAO」に移行する取り組みを開始したと発表した。DAOとは定められたルールに則って自律し、自動で動き続ける組織形態を指す。NPOがトークンを発行できるようにして、寄付以外での資本調達の選択肢を広げる。(オルタナS編集長=池田 真隆)

社会課題を中心に多くの関係者が集うようになる *クリックすると拡大します

ガイアックスがDAO化を図るのは、NPO法人ドットジェイピー(東京・千代田)。同団体は「若者の投票率の向上」を掲げ、インターンシップ・コーディネート事業や地域活性化に関するフォーラムなどを開催する。活動を開始して今年で25年になる。

ガイアックスはブロックチェーン技術を使い、2022年末までにドットジェイピーの学生スタッフ700人にNFTを含むトークンを発行できる仕組みをつくる。学生スタッフは団体への貢献度に応じてトークンを受け取れる。このトークンは、書籍購入や交通費などに使える。

こうすることで、学生スタッフがより自律的に運営に参画してもらうことを狙った。2024年3月までに、ドットジェイピー関係者以外の個人・法人にもトークンを発行できる体制を目指す。

DAOは、Decentralized Autonomous Organizationの略だ。ブロックチェーン技術を使って実現できるweb3時代の新しい組織形態を指す。

ドットジェイピーの佐藤大吾理事長は、「社会課題を解決するためにはNPOのDAO化が不可欠だ」と強調する。その理由をこう説明する。

「株式を発行できないNPO法人は、必要な資本を調達する手段が限られている。はっきり言えば大口寄付に頼るしかない。もしNPO法人がトークンを発行し、資金を調達することができるようになれば、これまでリーチできなかった層からの協力を集めることができるようになる」

佐藤理事長は、NPO法人のDAO化は、「コレクティブ・インパクト」の創出にもつながると話す。社会課題の原因は複雑化しており、複数の団体や個人が協力しないと解決が難しい。

DAOでは運営側とユーザー側が一体となる。「完全に一体となって課題に向き合っていく姿は、いわばコレクティブ・インパクトの究極の形と言える」(佐藤理事長)。

「正解はない」DAO化したNPO運営

DAO化した後のNPOの役割(イメージ)

DAO化することで、NPOスタッフの貢献度が可視化できるようになる。そうすると、「NFTをもらえないなら、やらない」というスタッフも出てくるかもしれない。さらに、外部から多くの協力者が表れる。これまでのマネジメントでは通用しない問題が起きるとされている。

佐藤理事長はその可能性にも触れ、「web3時代に対応した組織運営に正解やセオリーはない。試行錯誤を繰り返しながら運営していきたい」と話した。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #NPO#SDGs

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