記事のポイント
①Freewillは9月9日、東京渋谷でエシカルの祭典「MoFF」を開いた
②リアル会場とオンライン参加で合計2千人から申し込みがあった
③100以上のエシカルブランドが出展したが、Z世代発の多様なブランドが目立った
IT企業のFreewill(フリーウィル、東京・港)は9月9日、東京・渋谷でエシカルの祭典「MoFF(モフ)2022」を開いた。当日は100以上のエシカルブランドが出展し、Z世代を中心に2千人を超える申し込みがあった。特に目立ったのはZ世代発の多彩なエシカルブランドだ。(オルタナS編集長=池田 真隆)

「アパレルは汚染産業と言われている。だからこそ、アパレルからエシカルな社会づくりに取り組みたかった」。宮田知己さん(23)はそう強調した。手には靴下を持っている。
この靴下はBeComme(ビーコム)というブランドのものだ。国内産で植物性成分のみで製造した。一足1000円だが、売上高は全額寄付が特徴だ。このブランドを立ち上げたのが宮田さんだ。
宮田さんは大学時代から社会課題に関心があり、特に犬猫の殺処分問題に関心が強かった。そこで、昨年、殺処分問題などに取り組むことを目的にこのブランドを立ち上げた。

「個人活動での慈善事業」に特化するため、法人格は持たないことに決めた。宮田さんの呼びかけに応じたメンバーは4人いる。上は60代、下は高校生と多様なメンバーがそろった。OEM(別注生産)で作った靴下の販売を行う
靴下の製作費はクラウドファンディングで集め、これまでに数十万円を寄付したという。まだ活動は始めたばかり、「もっと大きくなって、社会を変える影響力を持った人になりたい」と意気込む。
■15歳で起業、伝統野菜の「種」守る
「一番生命力が強いのはどれですか?」。ブースに訪れたお客さんにそう聞かれた小林宙(そら)さんは、「大根あたりは強いですね」と返した。
これは「種」の話だ。上智大学1年の小林さんは伝統野菜の種を販売する。小さい頃から木の実などを集めるのが好きだった小林さんが株式会社を立ち上げたのは15歳の時。農家の後継者不足や気候変動などで伝統野菜の種がなくなりつつあることを知り、販売を通して、種の多様性を守りたいと考えた。

「鶴頸(かくけい)種苗流通プロモーション」という会社を15歳で立ち上げ、現在約70種類の伝統野菜の種を販売している。当日はその中から、44種類を選び販売した。
小林さんは「若いお客さんが多くて、種のことを知らない人もいた。話していて楽しかった」と言う。成果では出合えない伝統野菜は種から育てるしかない。「家庭菜園に興味を持ってくれる人を増やしたい」と述べた。
■京都の伝統技術「黒染め」、若者に伝えたい
「こんな身なりなので、商品よりもぼくにインパクトを受けるお客さんは多いですね」。デザイナーの兆(きざし)さんは笑う。兆さんはヴィジュアル系バンドの元ギタリストという肩書を持つ。音楽活動以外にも、エシカルファッションブランドを立ち上げ、社会課題の解決に取り組む。

新しい取り組みとして、古着の回収を始めた。単に回収するだけでなく、「黒染め」にして戻す。Tシャツなら1枚3000円程度で可能だ。黒染めは色落ちせず、黄ばみや変色も防ぐ。
組んだのは京都にある明治3年創業の馬場染工場。染料は環境負荷の低いものを選んだ。「廃棄せずに、長く着続けてほしい。黒染めそのものを楽しんでほしい」と兆さんは訪れた若者に伝えた。
このイベントの名称の「MoFF」とは、「The Museum of Freewill&Future」の略称だ。フリーウィルが2019年から開いており、昨年の2021年のMoFFでは約600人が参加した。今年は3倍を超える2000人から申し込みがあった。



100を越えるエシカルブランドが出展した。製品はフリーウィル社が開発したデジタル通貨(仮想通貨)を使用することで購入できる。この通貨は購入することで、森林保全団体への寄付になる。
出展ブランドの取りまとめを行ったフリーウィルの竹内大冴さんは、「たくさんの人が来てくれてうれしかった。普段はオンラインでしかつながっていないが、リアルで出会えて喜んでいる風景を見ると感動した」と話した。