※本稿はオルタナ21号(2010年9月30日発売)に掲載されたものです

記事のポイント
- 岡田武史・元日本代表監督が環境論と組織論を語った
- 「地球環境が大変だといっても、地球は平気で、人間が大変なだけ」と話す
- 南アフリカW杯でベスト16に導いた「秘密の鍵」についても語った
2010年6-7月、南アフリカで開かれたサッカー・ワールドカップ(W杯)でベスト16にチームを導き、高い評価を得た岡田武史・元日本代表監督。実は学生時代にローマクラブ『成長の限界』を読んで以来、環境問題には高い関心を持っている。環境教育から組織論まで、幅広く語って頂いた。(聞き手=聞き手:森 摂、吉田広子)

岡田武史(おかだ・たけし)
サッカー日本代表前監督。1956年、大阪生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、古河電工サッカー部(現ジェフユナイテッド市原・千葉)に入団。98年仏W杯で日本代表監督を務めたのち、99─01年コンサドーレ札幌監督、03─06年横浜F・マリノス監督を歴任。2010年南アW杯で再び日本代表監督を務めた。
──前号(オルタナ20号)に登場したレスター・ブラウンさんは「風力や太陽光は米国や欧州が先行し、日本は遅れをとったけれど、地熱であればナンバー1になれる」と主張していました。
いや、太陽光パネルは、そんなに遅れていないですよ。技術はありますから。
──日本が遅れた原因は、政策ですね。岡田さんはその辺りに詳しいとお伺いしています。
僕がやっている任意団体が、再生可能エネルギーを増やすための政策提言をしています。
──地球環境イニシアティブGEINですね。環境問題についてはどうお考えですか。
地球環境が大変だといっても、実は地球はまったく平気で、人間が大変なだけです。地球というのは誕生以来、どんどん変化していくもので、それに適応していくのが、僕ら生物なのです。
しかし、この200年、地球の気候変動が急激になったために人間社会が適応しづらくなった。それをスローダウンさせる活動が一般的に環境活動と言われています。僕はそれも大切だと思いますが、逆に、人間や社会が地球環境の変化に適応していくのも、立派な環境活動だと思います。
中でも僕は、「環境変化に適応できる人間を育てる」活動をしたい。今の日本人は、こんなに便利・快適・安全な暮らしに慣れきって、一番に絶滅するのではないかと危惧しています。「生きる力」が弱い。だからそこをやりたいのです。
──環境変化に適応できる人材づくりとは、子ども向けですか。
メインは、自己責任のとれる高校生以上を考えています。でも夏休みにスポットで、子ども向けもやりたい。まだ構想の最中です。自分たちで企画して、自分たちで乗り越えていく実習。こちらから与えるのではなく、です。
■「豊かだと思った社会」は「人をスポイルする社会」だった
──地球環境の変化に耐えうるために、ヒトや社会の方を変えるということですね。