記事のポイント
- SDGsとカーボンニュートラル達成を阻むのは「人間の欲望」
- 欲望の刺激は産業や経済を発展させてきた企業の戦略でもある
- 今こそ、産業革命以来肥大してきた欲望を見直す時期に来ている
2030年のSDGs(持続可能な開発目標)と、2050年のカーボンニュートラル。これら2つの達成は、経済システムと現代人の意識を変えない限り不可能だと、WEF技術開発(滋賀県大津市)の青山章社長は警鐘を鳴らす。同社は下水汚泥の燃料化などの技術開発を通し、循環型社会への貢献を目指している。2回目となる今回は、現代人の「意識」について紹介する。(オルタナ編集部)

SDGsもカーボンニュートラルも難しい第二の理由は、現代人の欲望です。(1)で紹介した経済システムより、こちらの問題の方がより根深いかもしれません。
6500万年前に小惑星が地球に衝突し、恐竜が死滅して哺乳類の時代がやってきて、やがて人類が誕生しました。それから長きにわたり、人類の数はほぼ一定の時代が続きます。
寿命が短かったわけではなく、生活環境があまりにも過酷だったからです。その間に、人類はいろいろなことを学びました。例えば実が付いた木々のある場所を見つけても、全て食べてしまうのではなく保存したり、食べられない人に分配したり、生き残るために知恵を付けていったのです。
それが大きく変わったのが、産業革命の18世紀です。20世紀に入り米国が台頭すると、大量生産・大量消費の暮らし(生き方)がスタンダードになりました。米国には欧州で食いつぶした人や、ジャガイモ飢饉を経験した人が移住してきたので、生への執着が強かったのかもしれません。
そこから出来たものをすべて買わせて、経済(お金)を回していく社会が始まりました。大量生産だけでは不十分で、大量に購入させなければお金は回りません。そこで企業が取った方法が、何万年も閉じ込めていた人間の欲望の解放です。
「もう我慢する必要はない。欲望のままに生きよう!この繁栄は永遠に続くから、幸福は早い者勝ちだ」広告などを通して企業が発信したメッセージは、あっという間に地球の隅々まで広がりました。
豊さと引き換えに、人類は化石燃料を巡る戦争を繰り返してきました。このままでは地球人口が90億人に達するといわれる2050年、水や食料の奪い合いはさらに激化しているでしょう。SDGsやカーボニュートラルとは異なる、もうひとつのシナリオです。
「20世紀の豊かさ」の象徴となった米国の人々も、幸福ではなさそうです。世界保健機構(WHO)によると、米国の平均寿命は世界40位(2021年)。人体の維持に必要なミネラルが不足し、大量生産食品が蔓延したことと無関係ではないでしょう。
この状況を変えられるのは、欲望を慎む暮らししかありません。しかしSDGsやカーボンニュートラルのために、それをどれだけ実践できるでしょうか。今まさに、私たち一人ひとりが問われているのです。これはどこかの国だけ、どこかの地域だけ、自分だけ大丈夫ということはあり得ません。