60歳以上の元気な人々を介護の担い手として活用することで介護分野の人手不足を解消するユニークな事業構想が「ソーシャルビジネスグランプリ 2011夏」のグランプリに選ばれた。このコンテストは社会貢献活動を行う人材を育てるビジネススクール「社会起業大学」(東京・千代田)が、受講生の事業構想を対象に7日、開いたものだ。
グランプリを受賞した「高・介併進策 かい援隊百万人構想」を提案したのは、会社役員で60歳の新川政信(にいかわ・まさのぶ)さん。
新川さんは37年間、生命保険会社に勤めて、採用や社員教育にかかわった。第二の人生では社会起業家の道を進みたいと一念発起。20代から30代の若者が集う同大学で4カ月学んだ。「これ以上、現役世代に負担をかけ、子や孫の世代の未来を奪う社会の仕組みを私は許せない」と、60歳以上による介護提案を考えた。2025年には介護分野での人手が100万人分不足すると見込まれている。
同大学名誉学長で審査委員長も務めたソフィアバンク代表の田坂広志さんは「実社会でキャリアを積み知恵を身につけた方こそ社会起業家の道を目指してほしい。新川さんに勇気づけられた」と讃えた。その上で「3・11以降、この国のために何ができるか、以前にも増して多くの日本人が真剣に考えている。誰もが社会起業家になれる。震災の悲劇が変化の始まりであったと振り返るようになりたい。すべての志を持つ人と共に歩みたい」と、期待を述べた。
最終選考には同大学3期生から6人が参加。約300人の一般の参加者による投票の上位入賞者で決まる「共感大賞」には、環境パフォーマーとして活躍する石渡学さんの「環境エンターテイメントを通して人と地域を元気に!」が選ばれた。
大道芸などを通じて環境教育や東日本大震災の復興支援イベントを行うプランだ。また「審査員特別賞」は会社員の大岡江美里さん、清輔夏輝さんの「サンタクロースは世界を変える!!」だった。サンタ派遣のNPO活動によって、教育や途上国支援を行うアイデアだ。
ソーシャルビジネスグランプリは今回で3回目。2010年にコンサルティング会社リソウル代表の田中勇一さんが設立した同大学の卒業生らが、一般聴衆の前でビジネスプランを競う。同大学はこれまで、約100人の卒業生を送り出した。(オルタナ編集部=石井孝明)