気候変動の観点から「新首相に期待すること」

5.「温室効果ガス25%削減目標」を維持し、実現するための政策を導入すること

震災後、気候変動問題への関心は下がっているが、エネルギー政策の根本的な見直しは始まった。エネルギー政策は温暖化対策の要であるため、「温室効果ガス排出量を2020年までに90年比で25%削減する」という目標と整合した形で進めていく必要がある。

国際的に表明した25%目標を堅持し、達成のために必要な政策として、排出量取引制度や炭素税について、具体的な導入を速やかにはかっていくべきである。特に、排出量取引制度については、昨年末の閣僚委員会にて無期限の検討課題として棚上げにされてしまった。これを再び、真剣に検討し、法律を成立させ導入していくべきである。

6.地球温暖化対策基本法案を通すこと

昨年3月から議論されている地球温暖化対策基本法案が、店ざらしにされている。同法案は、上記の温室効果ガス排出量削減の中期目標に加え、長期での削減目標(2050年までに90年比80%削減)、「基本計画」の策定、自然エネルギーの中期目標(2020年に一次エネルギーの10%)なども含んでいる。

原子力推進部分など、変更が必要な箇所もある。一方で、同法案を11月下旬から始まる国連気候変動会議(COP17・COP/MOP7)前に成立させることは、日本が引き続き気候変動問題解決にきちんと貢献していくことを国際社会に対して示す上で、何よりも明確な証となる。

7.2013年以降の途上国に対する資金・技術支援のあり方について、具体的な提案をすること

11月下旬から南アフリカ・ダーバンで開催される国連気候変動会議での議論を前向きに進めていくための1つの鍵は、先進国から途上国への資金・技術協力をいかに具体化できるかという論点である。特に、2013年以降、どのように国際的に協調して支援を行なっていくかについて、日本としての具体的な提案・考え方を持って会議に臨むことが必要である。

8.COP17において、世界の温暖化対策をまとめるための交渉を建設的にリードすること

日本は、国連気候変動会議交渉においては、「京都議定書の延長には反対」を強く主張する交渉を行なってきた。その背景としては、次期国際枠組みは、すべての主要国が参加する公平な枠組みでなければならないという主張がある。

しかし、その「すべての主要国が参加」できるような枠組み確立へ 向けて、建設的な交渉を展開してきたかといえば、大きな疑問符がつく。むしろ、「京都議定書延長に反対」との立場に固執するあまり、交渉全体の雰囲気を損なってきた経緯がある。今回の会議では、建設的かつ柔軟な交渉姿勢で、世界的な合意へ一歩でも近づけるように、交渉をリードしていく必要がある。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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