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記事のポイント
- 文科省調査では学習・行動面で「著しい困難」がある生徒は8.8%に上る
- 当事者の親は「症例は百人百通り」、個々の症例にあった包摂が課題に
- 社会人として活躍できる環境をつくる取り組みが官民で始まる
全国の小中学校で、学習面や行動面で「著しい困難」がある生徒が推定8.8%いることが、昨年12月、文科省が発表した調査結果でわかった。発達障害の子を持つ、フリーアナウンサーの赤平大さんは「症例は百人百通り」で、個々の症例にあった包摂(インクルージョン)が課題だと指摘する。教育現場での支援の充実に加えて、社会人になってからも活躍できる環境づくりが官民で始まった。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)
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文科省の調査は、公立小中高の児童生徒約9万人を対象に行い、学級担任などが回答した。約7万5千人の生徒についての回答が得られた。
「学習面又は行動面で著しい困難を示す」と推定される児童生徒数の割合は、小中で8.8%、高校で2.3%となった。一方、「特別な教育的支援が必要と判断されているか」については、小中で必要との判断が28.7%、高校で20.3%となった。
この調査は「発達障害のある児童生徒数を示すものではなく、特別な教育的支援を必要とする児童生徒数の割合を示すものである」との留意事項を付す。有識者会議の宮崎英憲座長は同調査結果への考察で、「必要な支援がなされるようこうな支援体制の構築と充実」や「それを支えるための仕組み」などの検討を求める。
■特徴は「百人百通り」
子どもの特徴に気づくのは、両親にとっても難しい。発達障がいとギフテッドの子どもを持つ、フリーアナウンサーの赤平大さんは「最初のきっかけは子どもが保育園に通っていた時だった」と振り返る。
「保育園の先生から『勉強を教えているんですね』と言われて、『言葉も大人に近い』と。そこまで勉強を教えておらず違和感があったので、先生から『検査をしてみてはどうか』と勧められて。検査して初めて子どもが発達障害とギフテッドであることがわかりました」
赤平さんは子どもの抱える生きづらさについて「山ほどあるのでは」と話す。集団行動が苦手ということもあり、習い事で教室に通っていても「もう来ないで」と言われたこともあった。
子どもたちへの支援に正解はない。赤平さんは「百人いたら百通りの症状がある」と言う。効果的な支援を行っていくには、それぞれの子どもに合わせて、保護者と学校、病院の3者が連携していく必要がある。
教員を対象にした研修も行われている。しかし赤平さんは「1、2回の研修参加では足りない」と訴える。
そこで21年6月に「voice and peace」を起業。動画メディア「インクルボックス」を通じて、支援や専門知識、ニュースなどを配信する。「多忙な保護者、教師、ビジネスパーソンが『ながら』で発達障がいについての知識を学べる環境をつくっていきたい」と意気込む。
■経産省など、ニューロダイバーシティに着手
支援の輪は、教育から社会へ広がりつつある。
経産省は「デジタル分野における『ニューロダイバーシティ』の取組可能性にかかわる調査」を行う。海外のIT企業などを中心に発達障がいを持つ人を積極的に採用するケースに注目した。
積極的に採用するのには、未開拓の才能ある人材が獲得できたり、生産性の向上などにも寄与したからだ。IT分野では、2025年にIT人材不足が約43万人まで拡大するなど課題が山積する。
ニューロダイバーシティを進めることで、活躍できる場を用意するとともに人材確保にも弾みをつけたい考えだ。
企業もこの動きに呼応する。武田薬品工業は昨年10月に「日本橋ニューロダイバーシティプロジェクト」を立ち上げた。10の企業・団体が賛同する。公式サイトでは職場でニューロダイバーシティを実現するための冊子を公開する。
赤平さんはニューロダイバーシティについて「2030年までにLGBTQ並みに社会の認知を高めていきたい」と話し、次のように続けた。
「最初から完全なニューロダイバーシティをつくるのは難しいし、それでは社会の認知を高めていけないと思う。まずは社会からの注目を集めて、教育や社会での支援体制構築の入口づくりを行っていきたい」