――では総雨量2000ミリの時代を控えて、社会や個人にはどのような備えが求められるのか
平野の少ない日本は、居住地域と崩壊の恐れのある斜面とが接近もしくは隣接しており、安全を確保するための法整備が重ねられてきてはいるが、実際の対策が追いついていない所が多いのも事実だ。ハード面の対策のみでは限界があり、自助、共助、公助を促すための意識の変化は非常に重要といえる。
また、インターネットの普及によって災害情報が素早く共有されているのは注目に値する。ツイッター等で「今どこどこでは豪雨だ」などという情報が「つぶやき」として駆けめぐり、メディアによる気象情報を補完する時代となる可能性も高い。
しかしここにも問題がある。都市部ではインターネットを介した情報共有が機能するが、ネット環境に接していない高齢者が多い中山間地では、そうした恩恵を受けにくい。またもし仮にネットで災害情報が得られたとして、今度はどこに逃げればよいのかという問題が発生する。
――中山間地が「環境難民」的な状況に置かれているということか
少なくとも住民の避難方法や、避難そのものに対する考え方を変える必要はあると言える。例えば広範囲にわたる中山間地で極端な豪雨が予想される場合、その地域内のどこかではなく、隣接する都道府県に事前に避難するなどの対策を取る必要が生じるだろう。予報の精度は年々向上しており、不可能ではない。
しかしその場合でも、長距離の避難を可能にする段取りや、高齢者や入院患者をどう安全に非難させるか、そして受け入れる自治体との連携など、解決すべき課題はたくさんある。これらを一つずつクリアするためには、国、地域、個人のそれぞれのレベルで出来るだけ早く「総雨量2000ミリ時代」が到来したことをまず認識し、解決に向けて動き出すべきだろう。