記事のポイント
- 英国の2023年第1四半期の風力発電量がガス火力を初めて上回った
- 風力発電量は全体の32.4%、再生可能エネルギーは総発電量の4割超に
- 英国政府は2035年までに電力部門での排出量の実質ゼロを目指す
英国の2023年第1四半期(1~3月)の風力発電量が初めてガス火力の発電量を上回った。風力発電量は総発電量の32.4%となり、再生可能エネルギーは総発電量の4割超を占めた。英国政府は2035年までに電力部門での実質排出量ゼロを目指しており、この目標に向けて前進した。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

調査結果は英大手電力会社Drax社が四半期ごとに発行するレポート「Drax Electric Insights」に先立ち発表された。調査はインペリアル・カレッジ・ロンドンの有識者が行った。BBCなどの海外メディアが報じた。
2023年第1四半期の風力発電量は総発電量の32.4%で前年同期比で3%上昇した。一方、ガス火力発電は31.7%となり5%低下した。風力がガス火力を上回るのは、英国で初となる。
第1四半期の風力発電の発電量は24テラワット時となった。これはテスラの電動SUVの「Model Y」を3億台以上の充電量に相当するという。
電源構成別では、原子力が12.5%、バイオマスが5.7%、太陽光が2.3%、水素が1.5%、石炭火力が1.3%となった。国外からの輸入は12.6%だった。石炭火力は2010年代初頭に最大の発電量だったが、10年足らずで最下位となった。
風力や太陽光などの再生可能エネルギーは総発電量の42%を占めた。一方、化石燃料由来の電力は33%となった。
英国政府は35年までに電力部門の排出量実質ゼロを目指し、洋上風力発電の推進などを進める。レポートの執筆者は「完全に脱化石燃料の電力を実現するにはまだ多くのハードルがある」としつつも、風力発電がガス火力を初めて上回ったことの意義を強調した。
一方でBBCは、新設される太陽光発電所や風力発電所が送電網の空き容量の不足のため、接続されるまでに最大で10~15年かかるとも報じた。インフラの整備も今後不可欠だ。