記事のポイント
- 松江地検が牛舎で乳牛を蹴った従業員を動物愛護法違反罪で起訴した
- 畜産動物に関する起訴は今回が初めてとなった
- これまでは、どのような酷いものであっても不起訴処分とされていた
松江地検出雲支部は7月13日、大田原農場(島根県大田市)の元従業員を牛舎で乳牛を蹴った虐待事件で、動物愛護法違反罪で起訴した。畜産動物に関する起訴は初めてだという。畜産業の何が課題なのか。オルタナ客員論説委員の岡田千尋・アニマルライツセンター代表理事が解説する。
(目次)
■養豚場や養鶏場での虐待は不起訴処分に
■畜産業の動物虐待は仕方ないのか
■「みだり」な動物虐待にあたる行為とは
2023年6月10日前後にSNS上で拡散された、乳牛への虐待事件の容疑者である従業員が7月13日起訴された(松江地方検察庁 出雲区検察庁)。
NPO法人アニマルライツセンターでは6月13日付で当該従業員を動物愛護管理法第44条第2項違反で、また大田原農場第48条第2項に該当するとして、双方の告発を行っていたが、大田原農場については不起訴の判断となった。
アニマルライツセンターでは、検察の判断をまずは正当なものと評価している。これまで、畜産動物への虐待が、どのような酷いものであっても不起訴処分であり続けたためだ。
例えば、アニマルライツセンターが告発をした事例では、愛媛県の養豚場で35頭の豚が飢餓で苦しめられ最終的に餓死させられた事件は、起訴猶予となり不起訴処分であった。生きたまま鶏を産業廃棄に出したというものも証拠が明確であったにも関わらず不起訴処分であった。
なお、環境省と農林水産省からは2021年1月21日、『農場における産業動物の適切な方法による殺処分の実施について』とする通知が発出されており、この中では「警察への告発を含めて厳正に対処する」ようにと明記されるなど、国は畜産動物への虐待は容認しない立場を取ってきた。
にも関わらず、その他、16万羽の肉用鶏を餓死させた事件も、2階から鶏を投げ落とす農場も、鶏を放置して衰弱又は餓死させる農場も不起訴処分であった。
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