記事のポイント
- ニッスイが養殖魚の「スタンニング」という手法で動物福祉の賞を受賞した
- スタンニングとは、養殖魚を活き締めする前に電気で気絶させること
- 海外では、魚のアニマルウェルフェアへの関心が高まっている
ニッスイが手掛ける養殖魚の「スタンニング」の取り組みが、アニマルウェルフェア(動物福祉)に貢献したとして表彰を受けた。同社は2022年度から養殖魚のウェルフェアを推進する。スタンニングとは、養殖魚を活け締めする前に電気で気絶させ、魚のストレスを軽減する取り組みだ。海外では、魚のアニマルウェルフェアへの関心が高まっている。(オルタナ編集部・下村つぐみ)
ニッスイが受賞したのは、「アニマルウェルフェアアワード2023」で初となる「魚賞」だ。このアワードは、アニマルライツセンター(東京・渋谷、岡田千尋代表)が国内のアニマルウェルフェアに貢献した企業を表彰するものだ。これまで「魚賞」を受賞した企業はなかった。
スタンニングとは、電流を用いて魚を気絶させ、感覚をマヒさせる手法で、活け締めの際に魚が苦しまないようにすることだ。同社は、養殖魚の96%で事前のスタンニングを行っている。
健康管理においても魚にストレスを与えないよう、AI・IoT技術を活用し、人が直接魚に触れることなく魚の体長や体重を測定する。
同社が魚のウェルフェアを進める背景には、魚の健康状態を維持することは、個体の福祉だけではなく、養殖業の持続可能性の向上にもつながるという考えがある。
魚にストレスを与える飼育では、疫病の発生や死亡率の上昇が起きる。病原体や寄生虫が養殖場外に拡散すれば、地域の魚類個体群や生態系にダメージを与えかねない。
日本では、魚のアニマルウェルフェアの認知度は低い。アニマルライツセンターの岡田代表は、魚のアニマルウェルフェアが進まない理由として、次の3点を挙げた。
1) 「魚が苦痛を感じる」という認識が低い
2) 日本の動物愛護法の対象動物種に魚が入っていない
3) 魚のウェルフェアは畜産などに比べ研究が進んでおらず、企業も対応が難しい
一方で、ニッスイは海外の投資家と対話する中で、魚のアニマルウェルフェアへの関心が高まっていることを実感したという。
2021年10月には国連食糧農業機関(FAO)が初めて、水生動物の福祉に関する新しい条項を追加した。海外での養殖魚のアニマルウェルフェアの認知度は高くなってきた。