記事のポイント
- 獣医学部に通う医学生向けに、VRで獣医療を実習する取り組みが始まった
- 麻布大学の高木哲教授率いる研究グループらが2月1日にVRシステムを開発
- アニマルウェルフェアにも貢献し、海外では医学生の成績も上げている
獣医学部に通う医学生向けに、VRで獣医療を実習する取り組みが始まった。麻布大学の高木哲教授率いる研究グループらが2月1日にVRシステムを開発した。現在は「犬の気管挿管」の実習が可能で、麻酔導入、気管挿管までをVR上で演習できる。(オルタナ編集部・下村つぐみ)
麻布大学・獣医学部獣医学科の高木教授率いる研究グループが開発したのは、獣医療トレーニング用VR「VETS VR」。スマートフォンゲームの開発を手がける、あまた(東京都・新宿)と獣医療出版社であるエデュワードプレス(東京都・町田市)が協力した。
「VETS VR」は、VRのヘッドセットを着用することで、高画質バーチャル空間内で獣医療の「手技」「手順」トレーニングができるものだ。現在は「犬の気管挿管」の実習が可能だ。必要な器具の選択から麻酔導入、気管挿管までをVR上で演習できる。
麻酔導入時には、犬の反応を見ながら麻酔薬の投与量を調節する。そのため、投与量の増加とともに反射的な瞬きが消失し意識がなくなっていく様子など、動物の反応を細部まで表現した。
近年は実習動物を用いた実習の実施が困難となり、学習機会を十分に得られない課題があった。実習動物を用いる実習は、実習動物のみならず学生や新人獣医師にストレスを与えやすい。
VR教材という疑似教材を用いることで、繰り返しの学習が可能になり、実習動物や学生の負担も軽減できる。海外の論文では、VRを使って学習した学生の方が試験の合格率が高いというデータもあるという。 すでに同教材は麻布大学の授業で一部導入しており、他の獣医系大学や機関にも提供する予定だ。