■ALTキーワード: ジェンダードイノベーション
記事のポイント
- 性差への注目が不十分な研究や知見は便益を阻害している
- そのなかでジェンダードイノベーションが科学技術分野で広がる
- 2005年に米スタンフォード大教授が概念を提唱し世界から注目集まる
性差(セックスやジェンダーの違い)への注目が不十分な研究や知見は、意図に反する結果をもたらす。
男性基準で開発されたため女性にフィットしない医薬品やシートベルト、学習データの偏りのため女性の認識率が低い顔認証技術、女性の病気という印象のため男性への対応が遅れがちな骨粗鬆症など、多様な事例がある。
この状況を逆に研究・応用の機会を捉えるのが、ジェンダードイノベーション(性差を考慮する革新)だ。科学・技術分野に文理融合的な性差研究を持ち込むことで、より多くの人にとっての便益を追求できるようにする。その適用範囲は医学、工学、都市計画、教育など多岐にわたる。
米スタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授が2005年に概念を提唱。同大は09年に研究プロジェクトを始動させ、のちに欧州連合や米国国立科学財団もこれに参画した。
日本では、政府が閣議決定した各種の基本計画(20年の男女共同参画基本計画など)で同概念への言及が見られるようになったほか、22年にはお茶の水女子大学が専門の研究所を立ち上げている。