世界の「統合報告書」をリードする「ノボノルディスク」社――下田屋毅の欧州CSR最前線(13)

統合報告書へ移行する一年前、2003年に3つの年次報告書を発行した。財務報告書、サステナビリティ報告書、そして、その間の存在として、小口投資家向けの財務報告書とサステナビリティ報告書の概観を掲載した報告書を発行した。

その後、その次の段階として、財務報告書とサステナビリティ報告書を残すのか、それとも2つを捨てて、1つにまとめたものを残すのかを考えたとのこと。そしてノボノルディスクは、統合報告書を発行していくことを選択した。

ノボノルディスク本社のサステナビリティ戦略チームは15人の陣営。全社の問題解決をデータ管理に依存している。チームのうち4人が、時間の半分を報告書に費やし、会計担当と伴に、年次報告書作成のプロセスの中で、データを一緒にし、統合報告書の最後のとりまとめは、サステナビリティチームが実施する。

◆マテリアリティを持たなければ、監査人がサインをしてくれない

スザンヌ氏は、さらにこう話す。「非常に難しかったのは、全世界の我々の拠点からのデータの収集である。厳格で、秩序ある非財務データを財務データと同じように集めることである。なぜならばそれは、年次報告書の中で、財務データの横に並ぶものだからである。これらは、平等に信頼性のあるものである必要がある」

統合報告を進めるにあたっては2つのキーポイントがあるとのこと。
① しっかりとしたマテリアリティ(重要性)の定義
② 基準(スタンダード)

マテリアリティを持たなければ、監査人がサインをしてくれない。そして、監査人とともに苦労し、どのように第三者保証を受けるか、何が報告書の中に必要なのかを見つける必要がある。また、ノボノルディスクが基準を持つ前は、財務報告書の一部には成りえなかったとのこと。

スザンヌ氏は、「統合報告書を進めるにあたっては、フレームワークが必要と認識している。これは、私も作業部会の一員として参加している国際統合報告委員会が現在取り組んでいる」。

国際統合報告書委員会は2012年中に公開草案の提出を目指し、GRIは、第4版であるG4を2013年5月に発効する予定で、これは、統合報告書を意識して作成を進められている。

統合報告書の道のりは、革新であり、企業全体での取組みであるという。欧州の企業も、動向を見守っている状況だが、IIRCのパイロットプログラムに参加している企業を参考に、日本の企業においては、統合報告書はまだ先の話として横に置いておくのでなく、現状のCSRへの取り組みレベルを上げるとともに、平行して調べていく必要があるのではないだろうか。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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