トリプル・ボトム・ラインを実践する世界のリーダー、ノボノルディスク――下田屋毅の欧州CSR最前線(44)

Takeshi Shimotaya for Alternaノボノルディスクは、糖尿病ケアを90年以上にわたって研究開発をしてきた、糖尿病分野の世界的リーダーで、デンマーク・コペンハーゲンに本社を置く。製品は5大陸180か国以上で販売され、従業員は世界75カ国に現在4万1900人。血友病と成長ホルモン不全のケアでも著しい貢献をしている。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

同社は、トリプル・ボトム・ライン(Triple Bottom Line: TBL)を企業の経営方針とする、CSRの世界的リーダーである。TBLとは、社会への責任、環境への責任、財務上の責任にバランスをとり意思決定する考え方で、ノボノルディスクでは、その中心に患者さんを据えている。TBLの方法で経営することが、持続性(サステナビリティ)につながるとも考えている。

トリプル・ボトム・ライン ビジネス原則
トリプル・ボトム・ライン ビジネス原則

「グローバル100最も持続可能な企業」にも上位で選出された。統合報告書は、英国コーポレート・レジスター社が主催する企業責任報告賞において、この賞が始まった2007年から14年まで統合報告部門で(不参加の2011年を除き)1位を獲得、統合報告における先進企業である。

ノボノルディスク全グループのCSR/サステナビリティに関する業務を統括する「コーポレート・サステナビリティ・チーム」は15名。年次(統合)報告書、共有価値創造、環境、人権、ステークホルダーへの情報発信、社内教育、ソーシャルメディアについて担当を分けカバーしている。TBLは2004年以来同社の定款に正式に明記されている上、ノボノルディスク・ウェイという企業価値観にもしっかり組み込まれている。

同社の経営トップは、非常に明確な権限をコーポレート·サステナビリティ・チームに委託している。TBLが、世界中の事業の全部門で、工場生産者と販売員から取締役会までに渡り、実践されていくことを推進、調整、挑戦する役を、チームは担っている。特に、挑戦する権限は重要である。

そして、従業員エンゲージメントの方法として、社内誌、イントラネット、ビデオ、ポスター、イベントなどの方法を活用している。中でも「TBLクォータリー」と呼ばれるニュースレターを四半期に一度社内外のステークホルダーへ発行、従業員自身の経験を共有するにあたり、ストーリーテリングを使用し説得力のある方法で伝える努力をしている。

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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