ヒト・カネ・情報を支援し市民活動を持続可能に

記事のポイント


  1. 福岡のコミュニティ財団が人・カネ・情報で市民活動を支援する
  2. 准認定ファンドレイザーや産業カウンセラー、理学療法士などが伴走支援
  3. より多くの人や企業からの支援を受けていくため公益財団法人化を目指す

グッドガバナンス認証団体をめぐる
 一般財団法人ちくご川コミュニティ財団

ちくご川コミュニティ財団は2019年に設立してから、人材や資金、情報で市民活動の支援を続ける。宮原信孝代表理事は市民団体が持つ課題について「持続可能性だ」と指摘する。資金支援と並行して情報支援なども行うことで、市民団体の強靭な組織づくりに貢献する。 (聞き手・村上佳央=日本非営利組織評価センター、萩原哲郎=オルタナ編集部)

最優先社会課題として「子ども若者の孤立解消と育成」、「自然災害支援」の2つを掲げる

――設立したきっかけと、ミッションについて教えてください。 

市民活動をされている人たちはその分野の課題に一生懸命取り組んでいますが、資金やスキル、情報が不足しています。

あるとき、市民活動をしている人と議論してでた結論が、社会と市民団体との間で資金や人材、情報を流通させる「中間支援団体があればこの状態を改善できる」ということでした。 

16年12月に休眠預金等活用法が成立し、休眠預金を民間公益活動に活用することが可能になりました。これを見て環境が整ったと思い、18年8月に設立準備委員会を立ち上げ、その1年後に財団を設立しました。 

私たちが最優先社会課題として設定するのは、「子ども若者の孤立解消と育成」と「自然災害支援」です。この2つに重点を置き、活動を行っています。

活動地域は、福岡、佐賀、大分、熊本の4県です。これまでに120団体に支援を行い、助成総額は8876万円となっています。 

市民活動団体の最大の課題は、持続可能性です。組織を強くしていくことが必要です。市民団体としての「活動」と「資金」、「組織」、この3つがうまく回るよう支援していくことが、私たちのミッションだと考えています。 

■カネは「本質ではない」 

持続可能な市民活動ができるよう定期的な勉強会や相談対応、プロボノとのコーディネートなどを行う

――市民団体は様々な課題を抱えています。これまでどのような支援を行ってきましたか。 

たとえば支援先として、設立間もない任意団体がありました。その団体は、養護施設の卒業生が社会に出ても、うまくいかなかった時にいつでも帰ってこられる場所をつくろうと活動していました。 

しかし、その任意団体が社会的信用を得るには、法人化は必須です。私たちもそれをアドバイスしましたが、最初は理解が得られませんでした。団体側は「ここは居場所であって、施設にはしたくない」と言って、法人化に難色を示しました。 

こちらからも「法人になることは信用を得るためで、施設になることとは違う」と丁寧に説明を重ねていきまして、社団法人となりました。地域住民たちにも活動を広報することで、その人たちからのサポートも得られるようになりました。 

支援団体が抱えている課題は様々です。それぞれの団体に合った支援を行うために、財団では資金支援以外にも、定期的な勉強会の開催や相談対応、プロボノとのコーディネートなどを行っています。 

資金支援は本質ではありません。より重要なのは、市民団体の組織を強化し、活動を持続可能にしていくことです。そういった支援を行うためにも、個別の課題に寄り添って俯瞰的な目線からアドバイスができる専門人材が必要不可欠です。 

現在、財団には准認定ファンドレイザーや産業カウンセラー、理学療法士の資格を持つ職員が在籍しています。支援を広げていくためには、こういった人材を増やす必要があります。 

クラファンで109人の新規支援者 

――そういった支援を継続して行っていくためにも、寄付を募っていくことも重要です。 

昨年12月から1月まででクラウドファンディングをしたとき、159人から支援を頂き、そのうち新たな支援者は109人いました。これだけ多くの人から新規の支援を頂けたことは大きな成果です。 

クラウドファンディングを通して全国の方から支援を頂けました。ホームページで団体について紹介するとともに、私たちが抱えている課題も情報公開し、SNSを通じて拡散することで、関心を広げていけたと考えています。 

経済界にも支援を考えていらっしゃる人が多くいらっしゃいます。そういった人たちに地道にコミュニケーションしていくことが必要です。 

公益財団法人化も目指します。公益財団になることで、寄付控除が適用されるので、より多くの人や企業からの支援を受けやすくなる。こうやって人や企業との接点を広げていきたいです。 

「公平・公正」を突き詰めグッドガバナンス認証 

――福岡県で初めてグッドガバナンス認証を取得しました。 

グッドガバナンス認証は客観的かつ専門的な視点から評価を受けて、認証されます。評価の過程では、自分たちの足りないところを補うための改革も行いました。 

認証取得を目指したのには、大きなきっかけがありました。 

財団設立時、多くの人に「中間支援団体」の必要性を共感して頂いて、理事や評議員になっていただきました。しかし、運営を進めるなかで「助成の運用をどうするか」ということを議論する機会がありました。 

そのときに出たキーワードが、「何が公平で、何が公正なのか」です。私を含む数人は「社会課題を解決するために公明正大なルールを設定しなければ」と主張しました。 

この議論のなかで、団体から離れる人もいました。そのときに、「私たちは、グッドガバナンスが何か、公平・公正とは何かがわかっていない」ということに気づきました。 

民間公益活動を公正な形で進めていきたいと考えていた時に、JCNEがグッドガバナンス認証の取得に向けて伴走支援をしてもらえることを知りました。認証に向けて組織を改革したことで、社会からの信頼も増し、社会課題を克服していくのにふさわしい団体になったと思います。 <PR>

「グッドガバナンス認証」とは

公益財団法人日本非営利組織評価センター(JCNE)が、第三者機関の立場からNPOなど非営利組織の信頼性を形に表した組織を評価し、認証している。「自立」と「自律」の力を備え「グッドなガバナンス」を維持しているNPO を認証し、信頼性を担保することで、NPO が幅広い支援を継続的に獲得できるよう手助けをする仕組みだ。詳しくはこちらへ

 

hagiwara-alterna

萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #サステナビリティ

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