記事のポイント
- EUが、衣料廃棄物の削減に向けて、新たな法制度化に動きだした
- 法案では、小売業者に対し、使用済み衣服の「回収負担金」を義務付ける
- 繊維のリサイクル目標量の設定も盛り込む
欧州連合(EU)が、ファストファッション廃棄物の削減に向けて、新たな法制度化に動きだした。規制法案では、小売業者に対し、リユース・リサイクルに必要な使用済み衣服の「回収負担金」を義務付ける。繊維のリサイクル目標量の設定も盛り込む。(オルタナ編集部・北村佳代子)

衣料の廃棄物問題はグローバルで深刻な課題だ。EU域内では、毎年排出される約520万トンの繊維廃棄物のうち、リサイクルに回るものはわずか4分の1で、残りは埋め立てや焼却に回される。
そこでEUは、2030年までに、域内で販売されるすべての繊維製品に対し、再生繊維の使用を義務づけると同時に、耐久性があり、修理やリサイクルも可能な製品としていくことを目指す。
新たな規制案の内容は下記の通り。
・小売業者は、リユース・リサイクルのための使用済み衣服の回収費用を負担する(義務化)。
・リサイクルすべき繊維廃棄物の目標量を設定する。
・適用対象はEU域内で販売されるすべての繊維製品で、衣類のほか、靴や家具などに使用される繊維製品も含む。
・本規則は、各国政府が施行する。
欧州繊維産業連盟(EURATEX)は、この動きを、繊維廃棄物問題に対処するためには必要なステップだと前向きに受け止めた。
サーキュラー・エコノミーの推進役として知られる英エレン・マッカーサー財団も、本規制案を歓迎する。同財団政策責任者のエマ・プリーストランド氏は、「グローバルに深刻化するアパレル廃棄物の危機に対処するため、EUは指導的役割を果たしている」と評価したと米ESGニュースは報じた。
一方、本規制案の内容を受け、追加的なコストの発生が最終的には価格の上昇という形で消費者に転嫁されることを懸念する向きもある。
ESGニュースは、英国小売業協会の広報担当者が「新たな規制が企業や消費者に不必要な負担を強いるのではないか」と懸念を表明したと報じた。
新しい法案は、今後、詳細を詰める。現時点で、施行に向けたスケジュールは明らかになっていない。
こうした動きに先駆けて、欧州アパレル企業の中でも、環境負荷の軽減に向けて取り組みが進む。
ZARAの親会社・インディテックス社は、衣料品へのリサイクル繊維の使用を2030年までに40%に拡大することを公約した。プーマも、衣服の回収・仕分けを行う企業と提携し、使用済み衣服の回収とリサイクルを支援する。