記事のポイント
- サステナ浸透でステークホルダーのひとつである家族がカギを握る
- 企業が家族巻き込み型で積極的に取り組むのが健康経営領域だ
- 経営学者の坂本光司氏は「社員の定着にも効果がある」と指摘する
サステナ浸透に向けて「家族」がカギとなる。企業に対する家族の評価が高まれば、社員の会社への自尊心やモチベーションの向上につながる。企業が積極的に取り組むのが「健康経営」での実装だ。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)
■「健康経営」の範囲は家族にも
「人材が流動化するなかで、家族の会社への信頼は社員の定着に大きなカギを握る」――人を大切にする経営学会の坂本光司会長はこのように指摘する。
米国では、コロナ禍でレイオフした人材が会社に戻らず、「大量離職時代」という言葉が広がった。そういった社会動向からDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)に加わったのが、Belonging(ビロンギング)だ。これは「自尊心を持った帰属意識」だ。
家族からの信頼を得るための取り組みとして、広がっているのが「健康経営」を社員だけでなく家族も対象にするものだ。たとえば坂本氏は静岡県のある会社の事例を紹介する。
「ある電気設備工事の企業では、毎年、社員の家族のひとりが人間ドックを受けられるようにしている。社員が元気に働いてもらうためには、本人の健康だけでなく、家族の健康も重要だ。そういった思いからこの取り組みが始まった」
こういった制度を坂本氏は「福利外厚生」だとする。
社会からの高い評価はもちろんのこと、家族からの高い評価を得られる企業は社員にとっても誇らしい。企業のサステナビリティで不可欠な社員の定着と、健康経営の双方にアプローチすることができる。
■家族の健診受診率向上を目標に
■健康経営理念を社員に語る
■社員の腹落ちが取り組みを深める原動力に
■LGBTQを家族で考える機会づくりも