オスプレイ報告書、安全対策は米国頼み

米海兵隊の新型輸送機オスプレイが、早ければ28日にも普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備されそうな気配だが、事故への不安は払しょくされていない。

沖縄県の仲井真弘多知事は25日、藤村修官房長官と会談し、今月内に予定されている普天間飛行場へのオスプレイの配備の中止などを要請。記者団に対して「(事故原因が)人為的なミスだということが、安全宣言になぜ結びつくのか。沖縄では全く意味が分からない」と述べ、オスプレイの危険性を改めて強調した。

防衛省と外務省が19日に示したオスプレイの沖縄配備に関する報告書の中で、今年に入りモロッコとフロリダで発生した墜落事故について、いずれも「機体自体に問題はない」とする一方、事故は「人的要因が大きい」と指摘している。

このため、日本政府は米国に対して6項目にわたり再発防止策を講じるよう申し入れたが、これらはいずれも米国頼みだ。

しかも「オスプレイによる低空における近距離での編隊飛行訓練は、認められた施設及び区域内においてのみ実施」するよう求める項目では、そもそも日本側から「運用上必要な場合を除き」と「ただし書き」を添えており、これには米国も「できる限り守る意向」としか回答していない。

新型輸送機オスプレイ(米海兵隊サイトから引用)

また報告書では、オスプレイの操縦の難しさの一端をうかがわせる記述も。2基のエンジンが停止した際にローター(回転翼)を空転させて降下や着陸を行う「オートローテーション」について、報告書では「10万飛行時間を超える運用実績からもそのような事態は一度も発生していない」とする一方、同操作中の降下率(降下する速さ)が一般の回転翼機(ヘリコプター)よりも大きく、実際に同操作で着陸すれば地面と衝突して「機体への損傷の可能性は排除できない」とも指摘。このため、実機でのオートローテーション訓練は行わず、模擬操縦装置での訓練で補う方針だ。

安全対策は米国任せで、日本が主体的に安全を確保することを投げ出しているようにも見えるオスプレイ。同機の訓練コースには本州や四国の上空も設定されている。

仲井真知事は25日の発言で「基地負担や危険性が増加するものを持ってくる論理のおかしさを、政府がきちっと自覚してほしい」とも述べたが、こうした沖縄が抱える不安や懸念が、もはや本土にとっても他人事ではないことを知る必要がある。(オルタナ編集委員=斉藤円華)2012年9月27日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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