難民の教育支えるマレーシアのアクセサリーブランド

記事のポイント


  1. マレーシアでは難民が「不法移民」として扱われ、生活環境は厳しい
  2. 難民の教育支援につながるアクセサリーブランドが誕生した
  3. 立ち上げたのは、元ミス・ユニバース・マレーシアだ

マレーシアには世界各地から難民が集まる一方で、「不法移民」として扱われ、生活環境は厳しい。そうしたなか、難民の教育支援につながるアクセサリーブランド「Fugeelah(フジーラ)」が誕生した。立ち上げたのは、元ミス・ユニバース・マレーシアだ。(オルタナ副編集長=吉田広子)

色鮮やかなビーズや天然石、淡水パールの組み合わせが美しいフジーラのアクセサリー(fugeelahのサイトから)
色鮮やかなビーズや天然石、淡水パールの組み合わせが美しいフジーラのアクセサリー(fugeelahのサイトから

避難を余儀なくされた世界の難民・避難民の数が1億人を超えた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計データによると、マレーシアでは約19万人の難民や亡命希望者が暮らす(22年時点)。そのほとんどはミャンマー出身で、ロヒンギャ難民も含まれる。

しかし、マレーシアは難民条約に批准しておらず、政府は難民を「不法移民」に分類している。そのため、マレーシアで暮らす難民たちは、仕事や教育、医療などにアクセスできない。

こうした問題に対処するために、社会起業家デボラ・ヘンリーさんは2009年、難民向けの教育施設「フジースクール」を立ち上げた。ヘンリーさんは、モデルやテレビ番組の司会としても活躍し、ミス・ユニバース・マレーシアに選ばれたこともある。

自身の発信力を使って「難民は安全を脅かす存在だ」という誤解を解き、難民に教育の機会を提供することで人生を好転してほしいと考えた。

■大学に進学した実績も

同スクールは、幼稚園から高等学校までの教育を提供。これまでに600人以上の子どもたちが教育や職業訓練を受けた。なかには、高校卒業資格を取得し、財団の奨学金を得て大学に進学した人もいるという。

17年には、UNHCRなどの支援を受けて、アクセサリーブランド「フジーラ」を立ち上げた。利益を学校の運営費に充て、持続可能な運営体制を築くことが目的だ。

現在、フジーラでは20代の難民4人が働いている。彼女たちはフジースクールに通いながら、アクセサリー製作の技術やビジネススキルを学ぶ。

フジーラはネックレスやブレスレット、ピアスのほか、バッグ類やお茶なども販売している。アクセサリー類は、カラフルなビーズと淡水パールの組み合わせが美しい。価格帯は約4千─8千円だ。オンラインショップを通じて海外にも発送する。

ヘンリーさんは、現地のネットメディアに対して、「教育は、人に与えられる最大の贈り物。生きるためのツールを提供したい。しかし、政府が難民を認めていないなかで、支援を続けるのは非常に難しい」と語っている。

「私たちの目的は、難民の子どもたちが学校を卒業できるように支援し、生活をより良く変えること。フジーラのアクセサリーは『小さな喜び、大きな影響』を生み出す」と続けた。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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