世界の主要なカカオ・コーヒー生産国で、森林破壊が顕著に進む。過去60年で、コートジボワールは森林面積の94%、そしてガーナは森林面積の85%を失っており、その約3分の1はカカオ栽培が伐採の原因といわれている。
ホンジュラスでも2002年から23年の間に約24%に当たる約50万haの原生林が消失しており、他にもペルーやコロンビアなどコーヒーの主要産地でも森林破壊が深刻だ。
主要な要因には、農家の経済的問題、気候変動、各国の森林保護政策の不十分の3つが挙げられる。農産品の市場価格の低迷などにより農家の収入が減少すると、短期的な収益を確保するために新たな農地開拓に手を伸ばさざるを得ない経済状況に追い込まれる。
近年は気候変動の影響によってコーヒーやカカオの生産に適する土地が変化していることも、森林地帯が農地化される要因の一つだ。各国の森林保護政策は、伝統的な土地所有権の曖昧さなどにより十分に機能していない部分がある。
カカオとコーヒーは、欧州の森林破壊防止規則(EUDR)の対象7品目に含まれ、今後欧州地域での流通には森林破壊フリーであることなどの証明が求められる。しかし、本質的な問題解決のためにはこうした根本的な要因に取り組んでいくことこそが不可欠だ。
森林破壊の抑制にフェアトレードが果たす役割が実は大きいことが、24年のオランダ王立熱帯研究所らの調査で示された。フェアトレード認証は、森林破壊禁止の基準、最低価格保証とプレミアムの支払い、そしてアグロフォレストリーの推進などを通して、世界の生産地での森林保護を進めてきた。
最低価格の保障による安定した収入確保は、農家の経済的不安定さを防ぐ。フェアトレード・プレミアム(奨励金)を活用し、生産者組合では植林活動や森林監視の強化などを行っている。
■「森林を増やす栽培」増える