記事のポイント
- クマによる人身被害やシカによる食害など、野生動物による被害が深刻化する
- まちづくりには、野生動物リスクに対するレジリエンスな視点が不可欠に
- 自然から借りていた「場所」を自然に還していくという発想転換が重要に
近年、クマによる人身被害、シカやイノシシによる食害など、野生動物による被害が深刻化している。これからのまちづくりには、「自然との共生」を前提とした野生動物リスクに対するレジリエンスな視点が欠かせない。これまで自然から借りていた「場所」を自然に還していくという発想を持たなければいけない。(オルタナ総研所長=町井則雄)

環境省のデータによると、2023年のクマによる人的被害は過去最多の219人に達し、今年も7月末時点で55人と同様のペースで推移する。
政府は4月、改正鳥獣保護管理法を成立させ、これまでは一切認められていなかった市街地での猟銃使用を市町村の判断で可能にするなど、法制度も現実に合わせた対応を迫られる事態となっている。
■ハンターの高齢化、担い手不足も
しかし、その現場対応を担うハンターの数は高齢化に伴い激減している。環境省のデータによると、狩猟免許所持者は1975年の約52万人から2020年には約22万人まで減少し、うち約58%が60歳以上である。
この数には猟に出ていないペーパーハンターも含まれており、狩猟登録をして猟を行っているハンターは約13.7万人と免許所持者全体の63%程度だ。制度は前進したが、現場の担い手不足という課題はむしろ後退している。
■ネズミ被害で「400億円以上」の損失も
■鉄道のダイヤ乱れや幹線道路の通行止めも
■自然から借りた場所を自然に還せるか