記事のポイント
- 秋の行革レビューで、環境省の進める「デコ活」の認知度の低さが指摘された
- 「デコ活」は、脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動を言う
- 環境省は対応策として、根拠となるデータに基づいた政策立案を進めるという
内閣官房行政改革推進本部事務局による秋の行革レビューが、11月14日、15日に開催された。有識者は、環境省が展開する「デコ活」について認知度の低さを指摘し、消費者の行動変容という国民運動には大いなる努力が必要だと問題提起した。環境省は、根拠となるデータに基づいた政策立案を進め、認知度の拡大と、行動変容を狙うという。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

秋の行革レビューとは、内閣官房行政改革推進本部事務局が、見直しの余地がある事業を対象とする公開検証だ。検証結果は、予算概算要求や執行改善等に反映される。
令和7年(2025年)度は、「経済産業省 安定供給確保支援事業(重要鉱物)【基金】」、「総務省 デジタル基盤改革支援補助金【基金】」、「環境省「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)推進事業」など、7事業を検証した。
■予算31億円超の「デコ活」とは
環境省の「デコ活」は、「脱炭素(Decarbonization:デカーボナイゼーション)」と「エコ(Eco)」、「活動・生活」を組み合わせた言葉だ。脱炭素につながる新しい豊かな暮らしの実現に向けた、消費者の行動変容・ライフスタイルの転換を目指す取り組みの総称で、2022年10月に始まった。
行動変容・ライフスタイル転換を喚起すべく、より豊かでより快適・健康な生活と、2030年度の温室効果ガス削減目標を同時達成する、新しい暮らしや具体的な取り組み(アクション)を提案する。
その予算額は、
①デコ活推進に係る社会実装型取組等支援(デコ活応援団⦅官民連携協議会⦆等):16.6億円
②地球温暖化対策推進法に基づく地域支援:3.14億円
③脱炭素型ライフスタイルへの転換促進:12億円
の計31.74億円(令和7年当初予算)だ。
■有識者から「デコ活」推進事業の課題提起も
しかし環境省の「デコ活」推進事業に対しては、有識者から次のような問題提起がされた。
- 官民連携協議会である「デコ活応援団」を通じて、消費者の行動変容を図ると説明があったが、令和7(2025)年10月1日現在、2738主体(1622企業、357自治体、382団体、377個人)では、国民運動というにはあまりにも少ない。浸透の必要性を大いに感じる。
- 消費者の行動変容を起こすのが目的であれば、その証左となる指標が必要だ。
- 消費者からの情報を入手しないのはおかしい。
- 「デコ活」のネーミングの認知度はあまりにも低い。
- EDPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング:証拠に基づく政策立案、すなわち、政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータの活用)に対応すべきである。
なお、環境省 「デコ活」推進事業有識者は、次の4氏だ。
・デービッド・ アトキンソン 小西美術工藝社 代表取締役社長
・伊藤 由希子 慶應義塾大学大学院商学研究科 教授
・永久 寿夫 名古屋商科大学経済学部 教授
・松村 敏弘 東京大学社会科学研究所 教授
■環境省は「デコ活」3事業の目標・指標を定める
有識者からの意見に対し、環境省は次のように方向性を示した。
「デコ活」のロジックモデル(取り組み内容・目標・指標)を、それぞれの事業の進捗を適切に把握するため、事業内容ごとに作成する。
具体的には、3つの事業の「目標・指標」を次のように定める。
①デコ活推進に係る社会実装型取組等支援は、「官民連携実践プロジェクト・社会実装プロジェクトの展開を通じた消費者の行動変容」
②地球温暖化対策推進法に基づく地域支援は、「補助事業等による地域でのデコ活の普及を通じた地域における消費者の行動変容」
③脱炭素型ライフスタイルへの転換促進は、「地域でのナッジ(強制や金銭的インセンティブを使わずに人々の行動を望ましい方向へ促す手法)等を活用した実証を通じたモデルの効果検証」とする。
環境省は、「デコ活は、愛称であり、取り組みの本質は消費者の行動変容だ。考え方の変容が行動の変容に至るとの前提に立ち、名前を知ってもらうように努力する」とコメントした。



