寄付金集めは「IT」「楽しさ」「参加意識」カギ

オルタナ27号(2011年12月)の第一特集「寄付の経営学/寄付の心理学」の取材でお世話になった日本ファンドレイジング協会代表理事の鵜尾雅隆さんと、先日お話をしました。

最近、寄付を巡って面白いケースがあったそうです。日本初の「クラウドファンディング」(小額寄付募集)サイトとして知られる「READYFOR?」で岩手県陸前高田市で被災した図書館の復興向けの募金を募ったところ、目標額の200万円が2日間で集まり、1カ月で800万円を超えたそうです。

鵜尾さんによると、韓国では「ビューティフルファンデーション」という寄付サイトがあって、世界的に注目を集めているとのこと。

ここは寄付の楽しさを前面に出し、5センチ×5センチくらいのレゴブロック様の立方体を配り、その中にお金を入れてもらい回収する。それを後でつなげ合わせて「巨大なハートマーク」に組み立て、皆で楽しむそうです。

こうした事例を聞いていると、世界の寄付の潮流は、「IT」「楽しさ」「参加意識」がカギであることが浮き彫りになってきます。

日本フィランソロピー協会の高橋陽子理事長がお勧めなのは「ペニー・ハーベスト」。家庭に眠っている小銭を子どもたちに持ってきてもらい、学校や地域で集めると、相当な額になるそうです。しかも寄付先は子どもたちが決める。単にお金を渡すだけではないという工夫が見られます。

「寄付白書2010」によると、2009年の日本の年間寄付総額は約1兆円で、米国の23兆円とは20倍以上の開きがあります。

よく日本のNGO/NPOの幹部の方から「なかなか寄付が集まらない」という声を聞きますが、工夫次第では何倍にも伸びる可能性があるようです。ただ、ノウハウは自分で考えて、独自性を出さないと、世の中で埋没しかねません。

日本ファンドレイジング協会は2013年3月9日と10日の二日間、東京で、アジア最大のファンドレイジングの祭典「ファンドレイジング・日本2013」を開催するそうです。

ソーシャルファイナンス、疑似私募債、クラウドファンディング、遺贈寄付などのノウハウが公開されます。米国でNo1のファンドレイザー養成学校として知られるインディアナ大学「ファンドレイジングスクール」ティム・スレイラー校長も日本で初講演をされるとのこと。

資金調達に悩むNGO/NPOの幹部の方は、ぜひ行かれてはいかがでしょうか。借りたお金は返さなければなりません。社会から支持されている実感を持ちながら、社会に恩返ししていく「ファンドレイジング」は、これからの資本主義社会において、大きな比重を持つ予感がひしひしとします。(オルタナ編集長 森 摂)

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森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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