地熱発電に賭ける福島の土湯温泉

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地熱発電が計画されている福島・土湯温泉の源泉。左のパイプから約130度の熱湯を新たな発電設備に引き込む。右は既存の温泉供給用タンク

福島市の土湯温泉に21日、地熱発電の事業化に取り組む株式会社「元気アップつちゆ」が設立された。専従職員1人という小所帯だが、エネルギーの未来にかかる期待は大きい。

土湯温泉は福島市中心部から西へ約16キロメートルの温泉街。聖徳太子の時代に開湯されたと古くから親しまれ、最盛期には25軒の旅館が年間32万人の観光客を呼び込んでいた。しかし時代とともに客足が離れ、2011年には旅館数が16軒に減少。住民の高齢化率も45.3%に達する深刻な衰退に悩んでいた。

そこに東日本大震災が直撃。地震で大きく損壊した旅館は建て直しができず、当初は避難者を受け入れていた他の旅館にも、原発事故の影響で本来の観光客が戻らない。結局、今は11軒の旅館が残るだけになり、客はピークの5分の1にまで減ってしまった。

震災復興を模索する過程で、JFEエンジニアリングなどから提案を受けたのが地熱発電の導入だ。

安定した自然エネルギーとして注目される地熱発電だが、国内ではこれまで、新たに深い井戸を掘削し、高温の熱水や蒸気で直接タービンを回す「フラッシュ発電」が主流で、大規模な設備が景観破壊となったり、周辺の温泉水の枯渇や湯質の変化につながったりする恐れがあるとして反発が大きかった。

これに対し、中低温の熱湯と低温で沸騰する有機媒体との熱交換で蒸気を発生させる「バイナリー発電」は、既存の源泉のパイプを枝分かれさせる小規模な設備で済み、余剰熱を利用するだけで湯量や湯質に影響はないとされる。

フラッシュ方式に比べて発電効率は低いが、7月に始まった固定価格買い取り制度で250キロワット級の発電に3億円ほどかかる設備投資も5年以内に回収するめどがつき、地元の意見はバイナリー導入で固まった。

来年3月までに入札で業者と機種を選定し、4月に着工、2014年7月の稼働を目指す。新制度下での地熱発電事業としては第1号となる見通しだ。将来的には小水力発電も合わせた自然エネルギーの温泉地として、新たな雇用と誘客を生むまちづくり計画を描く。

新会社の千葉訓道さんは「ここでの事業を成功させて日本全国に地熱発電が導入され、原発のない社会になってほしい」と願っている。(オルタナ編集委員=関口威人)

 

2012年11月22日(木)11:10

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