オルタナ別冊「特集コモンビート ミュージカルNPO完全報告」(2013年8月29日発売)

皆さんは「コモンビート」の名前を聞いたことがありますか。

2003年、日本で生まれた、ミュージカルのムーブメントです。

元はピースボートの船上で英語を学ぶプログラムとして、米国の教育NPO「Up with People」の作品「A COMMON BEAT(ア・コモンビート)」を上演したのがきっかけです。

これを陸上でも上演しようと中島康滋さん、韓朱仙さんら数人の若者が立ち上がりました。当初は英語での上演でしたが、その後、日本語に変わりました。

1回の公演のキャストは100人。これを全員、公募で集めた素人役者が演じるのです(舞台監督だけはプロ)。彼らは100日間の練習を経て、舞台に立ちます。

これだけ書くと、素人芸の集団かと誤解される方も少なくないでしょう。私も8月23日夜の東京公演を見に行き、90分にわたる舞台は、歌も踊りもとても質が高かったことに感銘を受けました。詳しくは⇒ http://www.alterna.co.jp/11585

◆ NPO法人コモンビートとは
表現活動によって、自分らしく・たくましく生きる個人を増やし、多様な価値観を認めあえる社会の実現を目指すNPO法人です。世界が近くなり多様な価値観が入り交じる機会が増える中で、ひとりひとりが個性を発揮し、お互いを調和させながら1つの社会を創り上げることの重要性が高まっています。こうした中、表現活動でひとりひとりの身近な社会から地球全体を変えていくような活動の一つとして100人の大人たちが100日間でミュージカル公演をつくるプログラムを行っており、これまでに約2,300人の参加者、64回の公演で観客動員数は9万人に達しています。

◆ コモンビートの仕組み

コモンビートが目指す社会の姿とは
コモンビート10年の歩み
「10年続く元気なNPO」である5つの理由

◆ コモンビート理事インタビュー

「事業型NPO」として100年続く組織を目指す
―― 理事長 中島康滋

表現する場を数多く用意し、「ありのままの自分」を認め合う
―― 理事・総合演出 韓朱仙

仲間と助け合い、共に熱くなる体験を続けていきたい
―― 理事・ミュージカル事務局長 安藤悠一

コモンビートを体現する生き方で存在そのものを発信する
―― 理事・総合演出 髙埜太之

第二の創業期としてより社会への発信力を高めたい
―― 副理事長・事務局長 安達亮

◆ 「100人100日プログラム」を大解剖!

100人で舞台に立つ
「違うからこそ美しい」、共通の鼓動を響かせるまで
100人で一つの舞台をつくり上げる仕掛け

①オーディション②ウェビング③自分への手紙④こっそりバディ
⑤多様なアクティビティ⑥合宿⑦チケット販売⑧全員が主役!
公演本番に密着!
裏舞台で支える「ボランティア」の人々
「100人100日プログラム」探訪記
コモンビートこぼれ話
宮城県多賀城市と石巻市で復興公演

――地元の人たちも懸命に歌い、舞う
101日目がスタート、本気の思いが人を動かす
コモビカップル集まれ!

◆ ミュージカルだけではないコモンビートの輪

「表現活動」を通じて広がるコモンビートの輪
コモンビート×Up with People、財団法人MRAハウス

国際的リーダーシップを身に付ける、国際教育プログラムへの参加支援

コモンビート×ピースボート
地球を舞台に、複数プロジェクトで連携

コモンビート×パートナー地域
村での交流体験をもとに作品をつくる「もざいくプロジェクト」

コモンビート×PARACUP
オリジナルパフォーマンスでマラソン大会を沸かせる

コモンビート×開発教育協会DEAR
参加型の学びで、知り・考え・行動する地球市民を育む

コモンビート×世田谷まなびばネット
イキイキとした多種多様な大人たちが子どもたちと融合

コモンビート10年の軌跡
Up with People からのレター

◆ NPOとしてのコモンビートの役割

「コモンビート」をNPO法人と見るか、ミュージカル活動と見るか――。もちろんその両方が正解なのだが、ここでは社会におけるNPO法人の役割に触れてみたい。
実はオルタナ本誌33号(2013年7月号)の第一特集「NPO成長の条件」で詳しく書いたが、日本でNPO法(特定非営利活動促進法)が生まれたのが1998年。その後15年の間で日本に5万近いNPOが生まれた。
NPOという存在は米国や欧州が先駆で、行政や企業の手が届かない分野を中心に、社会的課題を解決するのがそのミッションである。
日本でNPOと言えば「草の根」「小規模」「ボランティア」という印象にとどまるかもしれないが、グローバルに見るとそうではない。海外には年間の事業規模1億ドル以上のメガNPOがたくさんある。
その意味で10年間に参加者3千人、来場者10万人を動員したコモンビートは、日本のNPOの中でも非常に優秀な存在と言ってよいだろう。
では、コモンビートが解決しようとしている社会課題とは何か。下の表をご覧頂きたい。

地域コミュニティが崩壊し、近隣や家族とのコミュニケーションも不足しがちな現代社会において、コモンビートは「個性を認め合い、引き出す」「自己責任でチャレンジする」「多様な個性とぶつかり合う中で柔軟性を身に付ける」という「共育」の概念を打ち出した。
ミュージカルの活動の中で、参加者に「共育」を通じて生きる力を育んでもらい、自己を肯定し、人間として成長する道筋をコモンビートは示している。
今の日本には、自信や元気を無くした人が少なくない。しかし、コモンビートのような活動を通じて、生きる力にあふれ、元気な人が少しでも増えていけば、社会全体の活力も徐々に高まっていくだろう。
企業であれNPOであれ、目的やミッションが明確な組織は強い。コモンビートにはこれから20年、30年と活動を続け、より多くの人を巻き込んでもらいたい。そして、日本のNPOの成功例として、他の多くのNPOを勇気付ける存在になってほしい。「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」編集長 森 摂

 

◆ 陰ながら見守り、見守られる「こっそりバディ」に感動!(編集後記)

コモンビートの公演は、ダンスや歌の経験、年齢を問わず、一般からキャスト(出演者)を先着で100人募り、100日間でミュージカルをつくりあげるのが特徴だ。公演100日前に練習を開始し、毎週末、公演の開催地で練習を行う。
本番に向けて連帯感を高めていく仕掛けが数多く用意されているが、なかでも注目したいのが「こっそりバディ」だ。
こっそりバディとは、練習期間中、くじ引きで決まったバディ(相棒)をこっそり応援する仕組みで、誰が誰のバディだったか明らかになるのは本番直前。誰かがどこかで見守ってくれる有難さ、誰かを見守ることで生まれる強さを実感する。そして、実は、日常のなかでも、自分も誰かのこっそりバディであり、誰かに支えられていることに気付く。
プログラム最初に行われる「ウェビング」もユニークだ。配役によって分けられたチームごとに輪をつくり、名前を呼びながら、毛糸を次の人に投げていく。最後には、全ての人が毛糸で結ばれる。
初めて石巻公演を取材した当時、100人のキャストだけでなく、全国から駆け付ける運営ボランティア100人のパワーやホスピタリティに圧倒された。運営ボランティアはキャスト経験者でもあり、「次は自分が支える番」という思いで集まってくる。公演後、コモンビート事務局スタッフは、普通は目立たないだろう駐車場の交通整理を担当したボランティアらをみんなで拍手しながら称えることを忘れない。
こうした思いやりや情熱を循環させる仕組み、何気ない日常をスペシャルなシーンに演出するコモンビートのノウハウは、経営者、NPO、社会起業家や学生団体にとって多いに参考になるものだろう。
オルタナ副編集長 吉田広子

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◆表紙
2013年6月8、9日。400日間にもおよぶ準備期間を経て、コモンビート初の九州公演の幕が上がった。当初、九州でコモンビートを体験したことのあるメンバーはたった7人。手探り状態でのスタートだったが、あきらめずに体験説明会を12回開催し、104人のキャストが集まった。初上陸とは思えない圧倒的なパワーで会場を沸かせた。写真=高橋慎一

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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