復興に必要なのは、コンテンツではなく「コンセプト」【戦略経営としてのCSR】

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大久保 和孝(新日本有限責任監査法人CSR推進部長)

経済同友会震災復興委員会委員として福島県、宮城県、岩手県3県の震災復興の現地視察に参加した。遅々として進まない復興を目のあたりにし、如何にスピードを上げられるかが焦点と感じた。特に産業の立ち上がりが遅く、地域経済の活性化が十分ではない。他方、被災地域の多くは、震災前は過疎化が進んだ地域だったものの、復興に向けて多くのワカモノやヨソモノが立ち上がり、取り組んでいる姿もみられた。

各地域では、「ツーリズム」「復興マルシェ」「エコタウン」などの、「何」をやるのかというコンテンツに注目が集まっている。しかし、市町村がまとめた観光戦略の報告書には、似たようなコンテンツが並び、市町村名を隠せば、どこの地域の報告書かわからなくなる。このままでは復興はうまくいかない。根底に「どんな未来をつくるか」というコンセプトの議論が欠けている。もともと地域の活性化は、人口や観光客の減少に悩む日本全国の共通課題だ。震災から2 年が経過し、被災地だからといって特別に人が来るわけではない。なぜその地域に行きたくなるのかといった視点が欠けている。過度なコンテンツ競争は、お金や労力をつぎ込む割には効果が限定的で、消耗戦にしかならない。

地域に根を下ろし、未来をつくるために投資すべきであり、各地域ごとのコンセプトで人を魅了し、長期的な関係構築ができるかが成否のカギを握る。コンセプトとは、単なるブランドデザインのロゴではない。地域に根差す歴史的な事実を踏まえつつ、明るい未来を彷彿させるようなわくわく感をもたらす未来志向のものでなければならない。イメージだけではなく、具体性をもったメッセージを端的に示し、過去と未来をつなぐ架け橋となるものが求められる。

では、コンセプトはどのように作るのか。地域の良さをもう一度見直すことから始める。物的な事象ではなく地域の人々に根差す生き方や考え方を丹念に拾い上げ、まとめることだ。ヨソモノの視点で良さを引き出すのも有効だ。地域の人々には日常的なことでも、ヨソモノには素敵に映ることも多い。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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