水上 武彦(株式会社クレアン)
多くの企業が成長市場である新興国での事業展開を目指しています。日本企業が新興国市場で成功するためには、これまでの製品開発や事業のやり方を転換する必要があります。日本企業は、先進国の顧客向けに高性能な製品を提供することに慣れてしまい、そこそこの性能で低価格の製品・サービスが求められる新興国のニーズに対応した製品開発がなかなかうまくできません。
そこで重要となるコンセプトが「リバース・イノベーション」です。「リバース・イノベーション」とは、新興国で製品を開発し、そのグローバル展開を目指すというものです。先進国市場が主な戦いの場であった時代には、自国で新製品を開発し、その後でローカル市場向けにマイナーチェンジする「グローカリゼーション」が海外市場展開の基本でした。しかし、新興国が主戦場となる時代には、新興国においてゼロベースで製品開発を行う必要があります。
新興国市場での製品開発でカギとなるのは、5つのニーズのギャップ。「性能」、「インフラ」、「持続可能性」、「規制」、「好み」のギャップです。
「性能」については、途上国の人々は、超割安だがそこそこの性能を持つ画期的な新製品を待ち望んでいます。例えて言うなら、15%の価格で50%の性能を発揮する製品です。
「インフラ」については、途上国は、道路、通信、電力、銀行など、インフラの状況が先進国とは異なります。基本的にはインフラが不足していることが多いのですが、一部最先端のインフラが整備されていることもあります。例えば、電力などは不安定な地域が多く、電池式の携帯型心電計などが求められますが、無線通信などは発達している地域もあり、モバイル・バンキングや遠隔医療は普及しやすかったりします。
「持続可能性」については、途上国が経済成長を持続していくためには、「環境に優しい」ソリューションが不可欠です。