薪の森で自然エネルギーの地産地消を[岩崎 唱]

岩崎 唱
NPO法人 森のライフスタイル研究所 遊撃隊員
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雪の中、東京から参加のボランティアたちによる作業。長野県佐久市で

雪の中、東京から参加のボランティアたちによる作業。長野県佐久市で

NPO法人 森のライフスタイル研究所(以下、森ライ)は、長野県佐久市大沢で人工林の一部を樹種転換し、薪がとれる広葉樹の森に変える「薪(たきぎ)の森づくり」プロジェクトをスタートさせた。地元の人たちと協力し、東京から貸し切りバスで参加するボランティアの手で森づくりを行う。(NPO法人森のライフスタイル研究所=岩崎唱)

森ライは、主に都会に住む若者と森の窓口となる活動をしている。月に1~2回、東京から貸し切りバスで長野県各地、千葉県(津波被害林)の活動フィールドに向かい、植林、下草刈り、地拵えなどの森づくり活動を行っている、参加者の半数が女性で、しかも20~30代の比率が高いのが特徴だ。

長野県佐久市の大沢地区は、2009年からお世話になっている当団体とは一番馴染みの深いフィールドだ。大沢地区は、かつては大沢村といって植林に熱心だった村。今でも約226haの山林を財産区として所有している。所有山林の8割以上がカラマツ林。残りがヒノキとアカマツで広葉樹林は4%ほどしかない。

佐久市大沢財産区は企業の森の誘致にも積極的で現在、ソネットエンタテインメント株式会社と前田建設工業株式会社が大沢財産区と森林の里親契約を結んでいる。

森ライは2010年から前田建設工業株式会社が里親契約を結んだ「MAEDAの森」を活動フィールドに広葉樹林化した人工林を整理し、ヒノキの再植林を実施し、経済林として再生する活動を行い今年4月で全エリア約3haへの植林を終え、来年からは下草刈りを粛々と続けていくだけになっていた。

そこで新しい活動フィールドを模索していたのだが、財産区の議長さんから「最近、薪ストーブを使う家が増えたんで、薪が採れる森が欲しいんだよね」という相談があった。ヒノキ、カラマツの人工林であまり生育がよくない山林があるので、そこを整理してコナラを植えていきたいので手を貸してくれないかという。

現地を見てみると、大きく育ったヒノキがまばらにあり、他は広葉樹林化していた。このまま針広混交林という道もあると思うが、財産区としては育った木はすべて伐採して売ってしまい、地拵えをして薪が採れる森にしたいという。

生えている広葉樹は細く、東京から来る女性のボランティアでも手ノコを使って切れる太さなので、冬の活動フィールドとして利用でき、春には植林、夏には下草刈りの活動フィールドとして利用できるので協力して、薪の森を作ることとした。

経済価値が上がらないヒノキやカラマツをいまから時間をかけて育てていくよりも、15年後には薪として有効活用できる森にしたいというのは、理にかなっていると思う。自然エネルギーの地産地消という点では、なかなか健全な計画のように感じる。

考えてみれば、昔は広葉樹の森で、里山として地域の人たちが活用していたのだから、元に戻すということか。今年から来春にかけて手がけるのはわずか0.3haに過ぎないが、徐々に薪の森を増やしていく予定。来年からは、ドングリを拾い、耕作放棄地で苗床を作る作業にも挑戦してみたい。

植えられる苗にまで育つには3年ほどかかるが、エコノミーだしエコロジーだ。自分が住んでいる地区で薪がとれるというのは、地区の魅力の一つになるのではないだろうか。薪がとれる土地に移住したいという若者だっているかもしれない。

2009年に日本景観生態学会で発表された「アベマキ・コナラ薪炭林の10年周期による供給可能な薪エネルギー量」(金沢洋一、上村真由子、福井美帆)によると、兵庫県宍粟市の中山間地域に位置する集落ではアベマキ・コナラを中心とする里山薪炭林の薪からエネルギー供給量は毎年20~30GJで、日本の一般家庭で消費されるエネルギー量である43GJの半分あるいはそれ以上に相当するのだそうだ。

ちなみにこの集落(約50戸)が薪炭林として利用していたのは14haほどと推定されるらしい。大沢地区は、この集落よりも戸数がずっと多いが、260ha以上の山林を財産区として所有している。このすべてとはいわないがコナラなどに樹種転換することで、そこそこの量のエネルギーをまかなえるようになるかもしれない――と夢(妄想)はふくらむが、植えた後数年間の下草刈りに必要な人手や鹿の食害対策など頭が痛いことも多い。いずれにせよ、森を木材供給源としてではなく地元のエネルギー供給源としてみているのは興味深いことだ。

岩崎 唱
NPO法人 森のライフスタイル研究所 遊撃隊員
平凡なコピーライター。緑の雇用担い手対策事業の広告制作に携わり、広報誌Midori Pressを編集。全国の林業地を巡り、森で働く人を取材するうちに森林や林業に関心を抱き、2009年の森と洋服のプロジェクトよりNPO法人 森のライフスタイル研究所の活動に参加。以来、森づくりツアーやツリークライミング体験会等の企画運営を代表の竹垣英信と共に担当。森林、林業と都会に住む若者の窓口づくりを行っています。TCJベーシッククライマー。

2014年12月18日(木)12:24

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