編集長コラム) CSRの組織はどうあるべきか

ある大手ビール会社が今年4月、CSV推進部と環境推進部を統合するそうだ。詳しい事情を取材したわけではないが、望ましい流れといえそうだ。

というのは、日本の特に大手企業の場合、環境担当部署とCSR担当部署の両方が存在し、えてして両者のコミュニケーションがよくなかったケースが多いからだ。

日本企業が相次いでCSR部署を設立し始めたのが2003年で、この年が日本の「CSR元年」と呼ばれている。日本で最初のCSR部署をつくったのはリコーで、帝人やソニー、松下電器産業(現パナソニック)らが後に続いた。(CSR検定3級公式テキスト「日本企業におけるCSRの現況」、川村雅彦・ニッセイ基礎研究所上席研究員)

ところが「環境部署」の歴史はもう少し古い。90年代初頭からだから、CSR部署よりおよそ10年ほど先んじている。そのきっかけは、リオの地球サミット(1992年)やISO14001の発行(1996年)、そして京都議定書(1997年)への流れだった。

もともと日本では1950-70年代の公害体験を通じて、CO2や温室効果ガスに限らず、企業の生産・流通活動における排出物や廃棄物の低減や管理の意識が高かった。ISO14001が認証規格だったこともあり、企業のISO14001取得意欲も高かった。社員の多くも環境活動になじんだ。

多くの企業が環境部を作った10年くらい後に、CSRの専任部署を相次いで立ち上げ、特にメーカーにおいては、環境の部署とCSRの部署が並存する結果となった。中には、コミュニケーション不足や責任の押し付け合い、社内対立を招いたケースも聞く。

ある大手メーカーでは、環境活動は環境部が、社会貢献活動は社会貢献部が担当、CSRの部署はCSRレポートを作るだけという事例もある。これでは包括的なCSR/CSV戦略は望むべくもない。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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