「(年間積算線量)20ミリシーベルト以下での避難指定解除は違法だ」。東電原発事故により設けられた「特定避難勧奨地点」の解除をめぐり、福島県南相馬市の住民が4月、国を相手取り解除の取り消しを求める訴訟を東京地裁に起こした。公衆の被ばく限度である年間1ミリシーベルトを大きく上回る線量での国の「帰還強制」に対して、原告の住民は「20ミリシーベルト基準は信じられない」などと不安を訴えている。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■国の避難政策問う初の訴訟
特定避難勧奨地点は、年間積算線量が20ミリシーベルトを超えると推定される地点について、国が世帯単位で指定するもの。指定により住民は医療保険の減免などの支援が受けられ、また東電による賠償も行われる。
国は2011年9月以降、田村市都路地区や川内村、伊達市小国地区の特定避難勧奨地点を相次いで解除した。ところが、いずれの地域でも多くの住民が解除に反対。南相馬市で昨年12月に開かれた説明会でも住民は「解除は住民の理解を得ることが約束のはず」「家の中でも空間線量率は非常に高く、こんな環境に子供を帰せない」などと国を問いただした。
しかし国は「健康への影響は考えられない」との姿勢を崩さず、28日に指定を解除。賠償も3ヶ月後に打ち切られ、避難を求める住民は「兵糧攻め」に直面している。
今回の提訴は同事故にともなう国の避難政策を問う初の訴訟。132世帯・534人の原告の内、特定避難勧奨地点に指定されていた世帯は63世帯で、全体の4割以上を占める。
原告は訴状で「公衆の年間被ばく線量の上限は国際基準や国内法令で1ミリシーベルトと定められており、国はこれを越える被ばくをしないよう確保する法的義務を負っている」などと指摘。解除処分の取り消しと、1人10万円の賠償を支払うよう求めた。