ウナギビジネスに沸くミャンマー

世界有数の内水面漁業地帯であるミャンマー・イラワジ川流域の漁業の状況を取材する機会があった。
 
乱獲などが原因で漁獲量は減少し、捕れる魚のサイズも小さくなっていると科学者は警告するが、政府も漁業者も耳を貸さず、今日の収益拡大に躍起になっている、と研究者として水産局の仕事に長くかかわった関係者が話してくれた。漁業を取り巻く環境はどこもよく似ている。
 
多くの魚の漁獲量が減る中で未利用資源として漁民や政府の注目を集めているのが、ウナギやタウナギで、ウナギは主に日本向けに、タウナギは中国に大量に輸出されている。
 
イラワジ川のデルタ地帯のピアポンという小さな町の外れにある魚の仲買店の奥、薄暗い部屋の中にある水槽の一つでは黒いオオウナギが1㍍を超える巨体をくねらせ、隣の水槽では褐色のウナギがうごめいていた。
 
町一番のウナギ仲買人だという人物が「これがバイカラーで、ヤンゴン経由で中国に売られ、最後は日本に行くのだ」と褐色の大きなウナギを取り上げて見せてくれた。値段は1kg約2千円、この地域の魚としては破格だという。
 
彼がウナギの仲買ビジネスに目を付けたのは2000年ごろのことで、近所の村に中国人のバイヤーがアンギラの買い付けに現れるようになった。

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井田 徹治(共同通信社編集委員兼論説委員/オルタナ論説委員)

記者(共同通信社)。1959年、東京生まれ。東京 大学文学部卒。現在、共同通信社編集委員兼論説委員。環境と開発、エネルギーな どの問題を長く取材。著書に『ウナギ 地球 環境を語る魚』(岩波新書)など。2020年8月からオルタナ論説委員。

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