■英国:「EU脱退に続く今年2度目のショック」
英国は、今年6月のEU国民投票が予想外の結果になった事態を経験したため、今回の米大統領選でもある程度の心構えはあった。しかし、大差をつけての勝利にはやはりショックを受けた。
主要新聞には「決裂したアメリカ:欧州は不安な時代を警戒」(インディペンデント紙)など、選挙結果は英国同様、「社会の二極化の表れ」という主旨の見出しが並んだ。
大衆紙デイリー・メイルは「トランプ氏は、EU離脱後の英国にとって最大の理解者」とする右翼政党UKIP党首のコメントを取り上げた。
中道左寄りのガーディアン紙は、「モロッコで開催中のCOP22会場から、オバマ大統領のパリ協定参加努力が水の泡になるのでは」という懸念の声を集めた特集を組んだ。フランスのロワイヤル環境大臣が「私たちは、協定の力を弱めようとするどんな動きにも抵抗しなくてはならない」とのコメントを載せた。(ロンドン=冨久岡ナヲ)
■オランダ:リベラル政党は警戒、極右政党は期待
政治家としての経験が無いトランプ氏が米大統領選で当選したことに対し、オランダの各メディアは政治家や国民、そして在蘭米人たちからの悲観的見解を多く報道した。
自由民主政党(D66)のペッフトルド党首は、人種差別や女卑を公言する人物が当選したことを憂えた。アッシャー副首相も同様に、トランプ氏の当選に驚きを隠さない。米国の現象が欧州諸国に及ぶことを不安視する。その不安の核にあるのは、不平等が生む格差の拡大だ。
一方、トランプ陣営に期待を寄せるのは右翼政党(PVV)で、その党首ウィルダース氏はオランダも米国にならうべきと示唆した。
だが、オランダ国民は総じてトランプ政権に疑問を呈している。氏の暴言や私生活を含め、大国のトップと認めるには信用に足らない人物と考える人が多い。
ルッテ首相はトランプ新陣営との協調を希望し、貿易障壁計画こそ好ましく思っていないものの、米からの投資や貿易は必須と強調している。(オランダ=カオル イナバ)
■台湾:「台湾の貿易政策を大きく見直す事態も」
「台北時報」は「What Trump means for Taiwan(台湾にとってのトランプとは何か)」との社説を掲載した。
「台湾は元来米国の共和党とはいい関係を築いてきたが、トランプ次期大統領は、これまでの共和党の政策的方向性を周到するか疑問だ」と指摘し、次期政権があまりにも不確実なことが多いことへの懸念を示した。
「英文中國郵報」は、トランプ氏の内向き経済政策について触れ、台湾の貿易政策を大きく見直す必要があると指摘した。「鴻海のような大企業は、米国内へ生産拠点を移す必要に迫られる可能性がある」。
台湾企業にとって、中国に次いで二番目に輸出量が高い米国の動向は、台湾という小さな国に大きな影響を及ぼしそうだ。(寺町 幸枝)