乱獲のヒットエンドラン(共同通信・井田徹治)

人と魚の明日のために

日本人が古くから食べてきたウナギはアジアに広く分布するニホンウナギだった。

だが、今の日本人が食べているウナギは1種類ではない。極めて絶滅の恐れが高いとされ、欧州連合(EU)が輸出を禁止するまでには大量のヨーロッパウナギを輸入していた。それがだめになったころから増え始めたのが北米のアメリカウナギだ。

ところが、アメリカウナギも国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種とされるまでに数が減り、米国の多くの州で禁漁になった。それでもメーン州とサウスカロライナ州でシラスウナギ漁が認められているため、今でも多くのアメリカウナギが日本人の食卓に上る。
 
インドネシアなど東南アジアにいるバイカラー種、オーストラリアのウナギなども輸入されている。過去にはマダガスカルからアフリカのウナギを輸入した業者もあった。「ウナギ」というだけで高価で売れる日本の市場を目指して、世界中のウナギが日本にやってくる。

米国ではここ数年、アジア向けのシラスウナギの漁が大ブームになっている。メーン州は厳しい漁獲枠を設定し、毎年、抽選で漁業者を決めている。今年は425のライセンスに8千人を越える応募があった。価格はキロ当たり50万円近くと数年前の2倍近くに高騰、同州で最ももうかる漁業と言われるまでになった。

当然ながら、密漁も横行する。5月3日には、関係者が注目していた裁判の判決が出た。メーン州の男性が、同州外で違法に漁獲されたシラスウナギ約55万㌦(約6100万円)相当を購入、海外に輸出しようとしていたとして摘発されたのだ。

※この続きは、オルタナ53号(全国書店で発売中)掲載の「人と魚の明日のために」でご覧ください。

ida_tetsuji

井田 徹治(共同通信社編集委員兼論説委員/オルタナ論説委員)

記者(共同通信社)。1959年、東京生まれ。東京 大学文学部卒。現在、共同通信社編集委員兼論説委員。環境と開発、エネルギーな どの問題を長く取材。著書に『ウナギ 地球 環境を語る魚』(岩波新書)など。2020年8月からオルタナ論説委員。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..