書評『動物保護入門』:犬猫殺処分ゼロに何が必要か

■なぜ日本で殺処分がなくならないのか

一方、なぜ日本では多くの動物が殺され続けているのだろうか。

ペット産業において動物が「大量生産」され、生体販売されているという現実がある。繁華街で深夜、酔った客が動物を衝動買いする様子も多く見受けられた。

2012年の動物愛護管理法の改正で、インターネットだけでの販売(必ず対面販売もしなければいけない)やペットショップの夜間販売(午後8時以降の営業)が禁止された。

さらに飼い主の終生飼養の責務が盛り込まれ 、行政の引き取り拒否が可能となったり、動物殺傷・虐待・遺棄に対する罰則が強化されたりした。しかし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えつつも、多くの先進国で定められている繁殖の制限、八週齢規制、動物取扱業のライセンス制などがいまだ実現していない。つまり動物を大量に殺すことになる流通過程や構造的な問題点が規制されていないままなのだ。

これらの実現のためには、まず市民一人ひとりが、日本の動物をとりまく現状、構造的につくられている問題の根本を知ることが、不幸な動物を減らす最初の一歩になる。動物好きな人だけでなく、ドイツやギリシャの社会事情の考察としても興味深い内容で、多くの人に手にとってほしい一冊だ。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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