論説委員コラム「JPF失敗の本質」④

原田勝広
オルタナ論説委員
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国連がミレニアム開発目標(MDGs)を引き継いで2016年から打ち出したのが持続可能開発目標(SDGs)である。その担い手として最も期待されているのは政府でもNGOでもなくビジネスセクター、つまり企業だ。援助の世界に企業のリソースを取り込み、「SDGs時代」の連携モデルをいかに構築するか。それがジャパン・プラットフォーム(JPF)の喫緊の課題である。ところが今や経済界はJPFにそっぽを向き始めている。なぜか。

■ピースウィンズの功罪

ピースウィンズ・ジャパンの2017年度会計報告を見る機会があった。代表の大西健丞氏はJPF構想の発案者であり、旧態依然たるNGO業界に新風を吹き込んだ立役者、優等生だ。JPF資金から多額の助成を受け、「私物化」ではないかという声もあったが、支援活動の実績を背景にそうした批判を封じてきた。

しかし、会計報告の内容に驚いた。サポーターが多いのに、経常収益42億2千万円のうち助成金等(交付金、補助金含む)が33億5千万円(うちJPFからは18億7千万円)と8割を占めているのだ。経常増減額は1億3千6百万円の赤字に転落、正味財産増減額も2億8千万円の赤字と債務超過に陥っている。豊富な高い自己資金比率を誇ったかつての姿から様変わりしている。

財政的に窮地に立たされており、インサイダー取引事件で有罪となった旧村上ファンドの村上世彰元代表が関係するC&Iホールディングスから3億3千万円を借金するなど、借入金が7億6千万円に膨れ上がっている。

自立したNGOのモデルを目指したJPFだが、公的資金のATMと化している。リーダーのピースウィンズの変質がJPFの失敗を象徴しているかのようだ。

■ガバナンスの問題で信頼失墜

2017年のピースウィンズで思い出すことがある。当時、JPFの共同代表だった大西氏が、理事会に何の断りもなく、ヤフーと一緒に国内災害支援のプラットフォーム、SEMAという団体を立ち上げようとしていることが発覚した。

経団連、企業、国連の理事らが「JPFに不満があるからと言って、理事会に何の相談もなく勝手に、活動がかぶる別の団体を外部につくるのはおかしい。そういうやり方は信頼関係を壊す」「JPFとSEMAの両方の代表を兼務するのはガバナンス上問題だ」と猛反発。JPFを支えている人たちに対するNGO代表の背信行為で、経済界とNGOの信頼関係にヒビがはいった。

その後に続いたJENやアドラ・ジャパンの不正問題以上に影響は大きく、経済界が理事会から次々に撤退する原因となった。共同代表の元富士ゼロックス社長有馬利男氏の憤りも激しく、後任の経済人を推薦することさえ断り、JPFを去ったと伝えられる。

SDGs達成のため企業行動憲章を改正したばかりの経団連の企業行動・CSR委員会の二宮雅也委員長、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)代表理事でもある有馬氏、国連開発計画の元駐日代表、村田俊一氏ら、SDGsをけん引している人たちが理事に名を連ね、経営委員会が企業との連携を促進しようとしている絶好のタイミングだっただけに、NGOの独りよがりが悔やまれる。

SEMAは物資の調達をメインにしているが、大西氏が「JPFは企業の資金を集めているが、ヤフー募金では個人のお金が集められる」「乞食の御貰いは、皿が多いほどがいい」とと説明したのが印象に残っている。当時、ピースウィンズが資金的に困窮していたとすれば、JPFのほかにもうひとつ、自由になるお金が入る団体が欲しかったことがSEMA設立につながったのでは、という推測も成り立つ。

■犬の保護事業で書類送検

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原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍し日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門はCSR論、NGO・NPO論、社会起業家論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など多数。

2018年12月10日(月)9:03

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