サステナビリティ経営の質を見極める 3

統合報告を読者対象の観点から見てみましょう。

一つのレポートにあらゆるステークホルダー向けの情報をつめこむ場合。情報を簡素化してしまうだけだと、企業の概要は把握できても、詳細が分かりません。

経営の大きな流れや概要が分かっても、具体的にそれが細部まで落とし込まれて数値が紐づいているのか、その検証をしたいのに、大きな絵を見せられて何となく理解できるだけの情報しかない、先ほどの資本の結びつきでいうと、環境資本や社会関係資本との結びつきは簡潔に表現されていても、その肝心の資本の詳細が書かれていない…それでは何のための統合かわからないのではないでしょうか。

しかも、社会的責任に関する分野は事業活動や収益と密接に結びつかない部分は削られてしまう運命にあります。それで本当に広いステークホルダーの関心に根差した報告になるでしょうか。

最近はESGやサステナビリティという言葉が使われることも多く「CSR」や「CSR報告」は古いという意見も散見されますが、企業が社会に与えるマイナスの影響に責任を持ち、報告するという基本は、ESGでもサステナビリティでも前提であり、名前はどうあれその感性は、ますます重要になってきているということを忘れてはならないと思います。

・投資家向けの統合報告で重視されるESG 

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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