G20:デジタル経済の国際ルール「大阪トラック」構築へ

20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が6月28日から大阪市で開催されている。初日の28日はデジタル経済に関する首脳特別イベント、世界経済やイノベーションに関するセッションなどが行われた。(オルタナ副編集長=吉田広子)

28日に開かれたデジタル経済に関する首脳特別イベントで

■デジタル経済の国際ルール「大阪トラック」

安倍首相は「急速に進行するデジタル化の潜在力を最大限に活用するには、特にデータ流通、電子商取引に関して国際的なルール作りが不可欠だ」として、新たな枠組み「大阪トラック」の開始を宣言した。

78の世界貿易機関(WTO)加盟国・地域とともに、国際的なルールづくりを進める。2020年6月の第12回WTO閣僚会議までに実質的な進捗を達成するために努力することを表明した。

デジタル経済に関する大阪宣言(仮訳)では、「データがますます経済成長の重要な源になっており、その効果的な使用がすべての国の社会福祉に貢献すべきであるとの認識を共有する」としている。

だが、国ごとに見解の違いがあり、インドは「デジタル経済に関する首脳特別イベント」に出席しなかったほか、エジプト、インドネシア、南アフリカは「大阪トラック」への参加を表明しなかった。

■世界経済の下方リスクに懸念広がる

「世界経済、貿易・投資」のセッションでは、各国のリードスピーカーが世界経済の分析を行った。なかでも懸念されたのは「世界経済の下方リスク」だ。ほぼすべてのスピーカーが「自由で公正で非差別的な貿易制度の維持と強化が必要だ」とし、WTO改革が重要で、喫緊の課題であるとの認識が一致したという。

安倍首相は「2020年までに経済のデジタル化とデジタル課税に関して、G20のリーダーがコミットする必要がある。多くのスピーカーがルールベースの多角的な貿易の重要性についてコメントし、見解の一致があった。G20が制度的な改革を行う必要があることを認識している」と総括した。

■イノベーションこそが経済をけん引する

イノベーションに関するセッションでは、安倍首相は「イノベーションこそが経済をけん引するので、フォーカスをあてたい。イノベーションは経済発展および社会課題の解決を両立するカギである」と話した。

「自動運転」「医療ビッグデータ」「AI」の利活用に触れ、「データこそが成長のエンジンであり、イノベーションの源泉である。デジタル経済の潜在力を開花させるとともに、その恩恵をあらゆる人々にいきわたらせるためには、データの自由な流通が不可欠である。データの自由な流通を促進するためには、プライバシーを保護するなど、信頼が重要である」とした。

さらに「インターネットなどが若者の過激化、戦闘員のリクルート、資金集め、テロ攻撃の計画立案などに利用される一方で、表現の自由や人権などの観点からインターネットなどの使用に関する規制には、課題も多くある」との見解を示している。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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