原田勝広の視点焦点:養護施設の子は普通の子

原田勝広
オルタナ論説委員
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児童養護施設で育った若者の声を聴く機会がありました。様々な事情から保護者と暮らせないということで私たちが想像する以上に不当な扱いを受けていることがわかりました。例えばこんな風です。

「小さいころから母の暴言、暴力に苦しめられてきた。子どもの泣き叫ぶ声がする、と近隣の住民が児童相談所などに何度も通報してくれたが、その都度、しつけの範囲内ということになり誰も助けてくれなかった。首を絞められた時も同様で、絶望のあまり自殺しようとした。突然、やさしくしてくれていた学校の先生の顔が思い浮かび、相談して養護施設に入ることができた」

「中学生の時インフルエンザの予防注射をするのに、親の承諾が必要と言われた。施設出身なのでそれができず、注射を受けられなかった。受験の時、インフルにかかったらどうなるのかすごく不安だった。その後もアルバイトや就職、アパート入居、パスポート取得などことあるごとに親の印鑑が要るので途方に暮れる」

「養護施設で育つと生活圏が狭く社会にあまり知り合いがいないので孤立しがちだ。よく施設の仲間に電話する。ある時、そのうちのひとりに連絡を取ると、結婚していないのに妊娠し思いつめていた。相談する人が誰もいないのだ。施設の人と協力し、彼女を救うことができた」

親と関係が切れているために正当な扱いを受けていない子が大半です。しかし、だからと言って養護施設出身の子を「かわいそうな子どもたち」と色眼鏡で見たり偏見を持つのは間違いです。彼らは苦しい経験をしてきたけれど、その困難に挑戦し、克服しようと頑張ってきた若者です。保護者がいないことを別にすれば普通の子なのです。

あるNPOでこんな話を聞きました。日本の子どもたちとアフリカの子どもたちをインターネットで交流させたそうです。アフリカの子どもたちは東日本大震災や原発事故のことも知っており、原発はその後大丈夫かと心配してくれたといいます。これに対し日本の子どもたちは全員が、アフリカでは何が足りないか、何がほしいか、と口々に尋ねたそうです。恥ずかしかったとNPOの人は嘆いていました。

子は親の鏡です。日本人にとってアフリカを初めとする発展途上国はかわいそうな人たちなのですね。実際に現地に行ったことのある人ならご存知でしょう。彼らは親切で明るく、息子、娘たちも元気で、人懐っこい、心豊かな子どもたちです。日本の普通の子と変わりません。問題があるとしたら、優秀でも貧困故に人生の可能性が限定されてしまっていることでしょう。彼らには人生の可能性に挑戦できるような支えが必要です。

養護施設の子も同じだと思います。普通の子として彼らの人生の可能性を少しでも広げるお手伝いをするのが私たちのできることではないでしょうか。

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原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍し日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門はCSR論、NGO・NPO論、社会起業家論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など多数。

2019年9月26日(木)16:58

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