持続可能経営の先駆者 米インターフェイス物語(下)

インターフェイスがサステナビリティ経営に邁進する中、環境に対する世間の意識も変化していった。その象徴の一つが、国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)だ。(オルタナ編集委員・岩下慶一)

ミーザンCSOはハーバード大学で社会人向けのサステナビリティ・リーダーシップの客員教授も務める

まさに、アンダーソン氏が予期した方向に「パック」は飛んできたのだ。ある意味で、インターフェイスの理想の具現化ともいえるSDGsについてミーザン氏はこう評価する。

「国連が世界の開発について明確なロードマップを作ったことはとても素晴らしいことです。分野ごとに順位をつけたことも評価できます」

SDGsに触発され、インターフェイスのような地域に根ざした取り組みを行う企業は大幅に増えた。だがミーザンCSOには注文もある。

「正直なところ誤解も生じています。SDGsは政府がどのように開発を進めていくかの指針ですが、こうしたことには企業の協力がなければ達成できません。政府と企業が連携しなければ(サステナビリティは)実現できないのです」

国連という組織の性質上、SDGsが国家を対象とした指針となってしまうのは止むを得ませんが、より効果的なものにするためにはもっと企業に向けてのメッセージを発信する必要があります」とミーザンCSOは語る。

「SDGsはサステナビリティの主体である企業も視野に入れたロードマップであるべきで、国連はもっと企業と対話すべきだと思います。政府と企業がいかに連携するかをより明確にするべきです」

SDGsの持つ曖昧さゆえに、これを利用したSDGsウォッシュ(企業イメージを向上させるために環境に配慮しているように装うこと)が横行しているのも懸念の一つだ。

「SDGsがウォッシュのために利用されるのは非常に残念です。企業の試みが本当に社会貢献に繋がっているかのチェックには、あまり努力が払われていないと言わざるを得ません」

自社のPRのためだけにSDGsに表面的に関わる企業も多い。そうした上辺だけのSDGsを廃するために、もっと厳密な指針を作り、その貢献度を計測する必要があるという。

エリン・ミーザンCSO
インターフェイス社チーフ・サステイナビリティ・オフィサー。レイ・アンダーソンの思想を継承し、25年以上前に掲げられた積極的なサステナビリティのビジョンを現代に生かし、「クライメイト・テイクバック」 策定のリーダーシップを取る。同社は、世界全体に良い影響を与えるため、地球環境に悪影響を及ぼすものは排除するという考え方を貫く。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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