視点焦点:公益法人制度の欠陥、コロナで浮き彫りに

原田勝広
オルタナ論説委員

世の混乱が時に隠れた問題を顕在化させることはよくあることです。コロナ禍の拡大でレストラン、ホテルなど多くの業種の経営に影響がでていますが、普段、私たちの心を癒してくれる芸術文化関係の団体も非常事態に陥っています。特に公益活動を行っている公益法人団体の場合、制度の欠陥が運営の足かせになっていることがわかりました。(オルタナ論説委員・原田勝広)

まず、悲鳴のような声に耳を傾けてみましょう。

プロの楽団が会員となっている公益社団法人、日本オーケストラ連盟の場合、オーケストラの公演中止・延期は500件、損害は15-20億円(4月中旬現在)に及んでいます。当初は目先のものに限られていましたが、夏、さらにその先の公演までも中止・延期が入ってきています。収入ゼロですから給与制の楽団など管理費を払うめどが立たなくなっています。客席だけでなく舞台上も練習場も「蜜」な環境だけに、再開に向けても難問山積といえます。

音楽事務所やホールが加盟している一般社団法人、日本クラシック音楽事業協会は営利団体と非営利団体が混在していますが、公演の中止や延期は1,300件、損害は50億円。やはり、コロナの終息時期が見えず8-9月分の中止・延期もでてきています。クラシックの年間売り上げは325億円程度なので損害は2か月分に当たります。海外から招聘される演奏家も多いだけに世界的に広がるコロナ禍は深刻です。

ホールの予約、チラシ印刷、広報活動などはすべて事前の支払いですから、公演中止で収入がないとこれらが赤字になってしまいます。払わなくてすむのは演奏家の出演料くらい(これは音楽家本人には大変なこと)です。

コロナではどこも被害を受けているとはいうものの、公益法人の場合は特別の事情があります。税制上の優遇があるうえ、補助金や助成金を得やすいことを理由に経営上のしばりが異常に厳しいのです。

例えば、収支相償の原則(公益認定法第5条第6号、第14条)といって「適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない」ことになっています。工夫をこらしすばらしい演奏会を開いてお客さんが集まり大きな利益があがる。そのようなこと禁止されているのです。企業はCSV(共通価値の創造)、NPOも事業型がもてはやされる時代だというのに時代遅れの感は否めません。「官から民へ」のキャッチフレーズが泣いています。

また、遊休財産額の保有制限(公益認定法第5条第9号、第16条)があって、「遊休財産は年間事業相当額の1年分しか積み立ててはいけない」とされています。

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原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門は国連、CSR, ESG・SDGs論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』など多数。

2020年4月22日(水)9:00

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