現実の国連はといえば、世界保健機関(WHO)を舞台にエゴ丸出しの米国と中国が、コロナ対策そっちのけで醜い言い争いを繰り広げている。情報を出し惜しみする中国も傲慢だが、みずからのコロナ対策の遅れに頬かむりして拠出金の支払い停止やWHO脱退で恫喝を続ける米国も時代遅れ。とても、グルーバルに広がる感染症に対応できるとは思えない。
一方で、鏡像社会そのものの負の側面も露わになっている。ネット依存症の子が増えたり、精神的なストレスによるメンタルな病が出ている。オンライン教育でデジタル環境による貧富格差、DVの増加などの問題も表面化している。そして、これを管理しているZOOMなどは米国に拠点を置く企業、というのも気になる。このプラットフォーム寄りかかっているわれわれの安全は一体、誰が保証してくれるのだろうか。
まだ心配がある。コロナ騒ぎで中国では、移動履歴や健康情報をQRコードで管理しているし、インドも追跡アプリに外出許可証などを追加、利用を義務付けている。使い方によってはプライバシー侵害や人権問題を引き起こす危険性をはらんでいる。
国家の枠を越え、デジタル社会の課題に取り組む準備が求められる。ミラーワールドの国連加盟に関心が寄せられる背景にはそんな思いがあるのだろう。
国連について考えてみよう。国連は国家の集まりでありながら、市民組織の協力を得てきた歴史がある。第二次世界大戦が終わり、1945年に加盟国によって調印・批准された国連憲章はその前年の夏から秋にかけてワシントン郊外のダンバートン・オークス邸で草案が練られ、1945年に入ってサンフランシシコで内容が固められた。
安全保障だけでなく経済社会問題に関心を持っていた欧米のNGOは強烈な巻き返しを図った。その成果が憲章第10章(経済社会理事会)の「NGO条項」だ。そこには、こう書いてある。
「経済社会理事会はその権限内にある事項に関係のある民間団体(NGO)と協議するために適当な取り決めをおこなうことができる」
経済社会理事会に関与を求められたNGOは関心領域や専門性によって3つのカテゴリーにわかれており、カテゴリー1は多くの分野に関心を持ち、国連に顕著な貢献ができるNGOで、理事会に議題を提出する権限を有する。カテゴリー2は特定分野に関心があり、能力が高く国際的に知られたNGOで、理事会にオブザーバーを出席させることができる。カテゴリー3のロスターは専門分野に関連のある会議にのみ出席できる。こうした背景から国益に縛られないNGOがリオの環境サミットをはじめ女性会議、人権会議など地球規模課題の会議をリードし、地球温暖化ガスの削減やMDGsやSDGsでも貢献していることは記憶に新しい。
そして、今や、新しい世界に向けてミラーワールドの助けが必要なのだ。われわれはまだミラーワールドのとば口に立ったところだ。VR(バーチャルリアリティ=仮想現実)、MR(ミクストリアリティ=複合現実)を含むXR技術は今後、スピードを上げながら一層の進歩を果たすに違いない。そして、本格的なミラーワールドがやって来るのである。