CSRの3つの効用(2)――CS(顧客満足度)が上がる

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前回の拙稿では、「CSRの3つの効用(1)――ES(従業員満足度)が上がる」http://www.alterna.co.jp/7871――を書いたが、ESとCSに相関関係があることは、よく知られている。つまり、ESが向上すれば、必ずCSが向上するのだ。

その場合、CSとはBtoC(対顧客)的な一般顧客だけではなく、BtoB(対企業)上の企業顧客も含まれる。最近では、BtoF(対ファン)という言葉も使われ始めた。

結局は、その企業のファンが増えれば、中長期的に、その企業の業績や収益は必ず向上する。この図式は、理解するのにさほど難しくはないだろう。

ヤマトホールディングスは東日本大震災を受け、わずか2週間後の4月1日、「宅急便1個に付き10円を被災地に支援することを決めた。12年3月までの1年間で宅急便の個数は14億個、寄付の総額は140億円に達する見込みだ。

今年6月に開かれたヤマトの株主総会では、株主の一人からこんな質問が出た。

「私はヤマトが寄付することを報道で知ったが、その詳細を木川社長から直接説明されたわけではない。140億円という巨額の寄付をすることにまだ納得はしていない。いまこの場で説明をしてから、賛同するか決めたい」

これを受けて木川眞社長が、寄付の仕組みと使い道を説明すると、会場から割れんばかりの拍手が起こったという。

株主や投資家も、広い意味では企業の顧客である。彼らと中長期的に良好な関係が築ければ、それは株価の下支え要因になる。企業は株主優待の内容で競っているが、株主自身に対する特典より、第三者への寄付の方が株主に共感を呼び起こすことができるのではないか。

ツイッターやフェイスブックなどソーシャルメディアが世界の普及してきたことも大きい。ソーシャルメディアは、目下のところ、特定多数に「共感」を伝える最強のメディアだからだ。
事実、先のヤマトホールディングスの寄付のニュースに対しては、筆者のツイッターアカウントに下記のような賛同が多数寄せられた。2011年11月のことだ。

「クロネコひいきしよ」「私も。RT 震災後はヤマトしか利用してません。応援したい」「素晴らしい!これからはゆうパックよりクロネコだわね」「すばらしい、毎日来ている方にお礼を言おうっと」

もちろん、賛同の意見だけではない。こんな厳しい意見も出るところが、ソーシャルメディアならではだろう。

「でもこれが何に使われてるんだろう。。東北の冬は厳しいので早く被災住宅の修繕費とか、ストーブの配布などに回してほしい。寒さで亡くなる人も出てしまいます」「その前に社員の待遇改善してあげて」

顧客の共感をレバレッジ(テコ)にしたソーシャル・マーケティングやコーズ・マーケティングも花盛りだ。「製品1つに付き何円を寄付します」という手法が多い。

現在の日本は長引く不況で、企業の収益力も落ちている。CSRも、単なるコストセンターではなく、「本業と連動していること」が強調されているのも、不況という背景が密接に関連してのことだろう。

CSRの専門部署も、新しいCSRを社内に提案する時に、本業と連動していることを売りにしないと、なかなか経営陣や営業部門を説得できないと聞く。

だが、本来のCSRは、必ずしも本業と連動する必要はない。「連動していても良い」し、「連動しなくても良い」ものだ。そうでないと、企業によるフィランソロピー(慈善活動)すら否定されてしまう。

筆者はオルタナ11号「ソーシャルとブランドを考える」で、企業のCSR活動に必要な要素を5つあげた。(詳細はhttp://www.alterna.co.jp/401

(1)献身的:  売上高の増加やブランドイメージの向上など、短期的な見返りを求め過ぎると社会貢献活動そのものの目的が不明確に なるし、その意図を消費者に見透かされる。

(2)持続的:  せっかくの社会貢献活動でも、短期間で止めてしまえば、被援助国から反発さえ予想される。経営者や担当者が変わっ ても、継続的に活動を続けることが重要だ。

(3)独創的:  現在の「CSR」ブームに単に便乗するのではなく、自社の本業や成り立ち、歴史を踏まえた、独自性の活動が求め られる。独自性があれば、他者の心に響く。

(4)本質的:  援助される側が何を求めているか、その本質を探る。本質的でなければ社内も動かせないし、社外にも伝わらない。ま してや支援される側の状況も改善されない。

(5)全社的:  日本企業では、往々にしてCSRの専門部署は頑張っていても、会社全体になかなか伝わりにくい。全社的な活動にで きるかどうかは、経営陣の意思にかかっている。

なかでも最も重要なのが、「持続的」であることだ。その意味で、ヤマトホールディングスの寄付も1年で終わってしまうのは残念だし、ボルヴィックの有名な「1L for 10L」も、実際にアフリカへの寄付対象になるのはペットボトル飲料水の需要期である夏だけの限定キャンペーンであることは議論の余地がある。

いずれにしても、企業が中長期的にファンを増やしていくために、今後、ますます「ソーシャル」の観点や「共感」が不可欠になってくるのは間違いない。(オルタナ編集長 森 摂)

2012年1月4日(水)13:41

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