被災と復興のリアルを伝える――「つくることが生きること」東日本大震災復興支援プロジェクト展

未来美術家・遠藤一郎が被災地支援に使った『未来へ号』

「革命を起こしたい。でも、革命の方法が分からない」。アーティストの開発好明は、そうクリーニング屋の「おばちゃん」にぶちまけられるという。アートによる被災地巡業で訪れた福島県南相馬市での出来事だ。東日本大震災をめぐる報道とリアルのギャップは埋まるどころか、さらに亀裂を深めようとしている。そうした被災地のリアルを知ることのできるのが、東京・秋葉原で開催中の「つくることが生きること」東日本大震災復興支援プロジェクト展だ。

本展では、被災地の支援・復興に取り組む、約90組ものアーティスト、活動家、建築家、企業、NPO組織の活動報告が展示されている。ここ十数年浮上してきたNPO組織など、市民と行政の垣根を越えた社会活動の真価を検証する機会でもある。

「復興リーダーからのメッセージ」ブースでは、現場の肉声を聞くことができる

企業ブランドのロゴを付ける広告収入で、漁船購入の費用を捻出する。瓦礫から薪を作り、販売する。来たるべきコミュニティビジネスを立ち上げるための情報基盤整備――。いずれも自助努力による故郷復興の試みだ。展示では、こうした活動に取り組む人々の写真と肉声で構成されたブースがある。その不屈の闘志に心を打たれ、涙ぐむ人々も見られた。折れ曲がった標識など被災の証言も展示され、単なる社会プロジェクト展に止まらない工夫も見られた。

3月11日14時46分、黙祷の様子

初日は運命の時間、14時46分の黙祷とともに、幾つかトークイベントが行われた。冒頭の開発好明による現場報告もそのひとつ。被災現場の矛盾は、彼に《政治家の家》を立ち上げさせた。福島第一原発20キロ圏の貧相な木造小屋に、「現場を知れ」と政治家のみ招待する辛辣なプロジェクトだ。

アーティストの藤浩志はモヤモヤ会議を開催。集まった人々が普段疑問に思って言えないことを、「モヤモヤ」という柔らかい切り口で発言へと誘った。本展では放射性物質汚染への言及はやはり控えめな中、積極的な告発の担い手はアーティストたちだったのは記憶しておくべきだろう。(美術・文化社会批評 アライ=ヒロユキ)

「つくることが生きること」東日本大震災復興支援プロジェクト展

2012年3月11日(日)〜25日(日) 12:00〜19:00 会期中無休
主催:わわプロジェクト(一般社団法人非営利芸術活動団体コマンドN)
会場:3331 Arts Chiyoda 1F メインギャラリー
〒101-0021 東京都千代田区外神田6丁目11-14

 

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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