CSR戦略は経営の切り札--リヴァックス赤澤代表取締役×大和総研環境・CSR調査部長河口氏

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赤澤健一(あかざわ・けんいち) 株式会社リヴァックス代表取締役社長

CSR報告書で数々の賞を受賞し、ISO26000の先進的な取り組みで知られるリヴァックス(兵庫県西宮市、赤澤健一社長)。

同社がCSRに取り組む最大の理由は、産業廃棄物の収集運搬や中間処理などの業務にあたって、コンプライアンス(法令順守)や透明性・安全性の確保が競争力の源になるからだ。

CSRへの造詣が深い、大和総研環境・CSR調査部長の河口真理子氏が、赤澤社長にリヴァックスのCSR戦略を聞いた。

河口真理子 リヴァックスさんはCSRレポートや環境コミュニケーションなどの賞を過去に5度も受賞されるなど、中小企業として、突出したCSR活動や報告書で有名な存在ですが、赤澤さんがCSRやISO26000に関心を持たれたきっかけは何でしょうか。

赤澤健一 私はずっと以前から「廃棄物処理業は社会になくてはならないのに、いつも社会からグレーに見られてしまうこと」に忸怩じたる思いがありました。それで、企業の透明性を高めて、社会や顧客から理解されることが、事業成長の近道だと思ったわけです。

当社は2000年にISO14001の認証を取得しました。そのころ、廃棄物業界ではISO14001は「黒船が来た」ように受け止められていましたが、私は逆に、「当社にとってそれはちょうど良い仕組みづくりだ」と思ったのです。しかも、ISO14001はコンサルタントにはお願いせず、自社で取り組みました。

◆報告書に様々な声反映

河口 2000年に認証取得とは、ずいぶん早いですね。しかも自社スタッフでやられたので、御社は他社のI S O14001のコンサルタントもできますね(笑)。環境報告書の取り組みも2002年からと、非上場企業としてはずいぶん早くから始められました。

赤澤 当初は「環境報告書」、その後、「環境・社会報告書」という名称に変えました。2007年ごろ、処理施設を格段に増強したことで、さらにCSRへの取り組みを強化したいと思い、CSR報告書
という名前に変えたわけです。

河口 リヴァックスの報告書は、社外のさまざまな立場の人のコメントがたくさん出ているのが印象的ですね。農家から企業の環境担当者さんまで、多くの人が登場しているのは御社がコミュニケーションを頑張っている証に見えます。

銀行の支店長の方が写真とコメントを出しているのもとても良いですね。一流の金融機関がリヴァックスと取引している、つまり企業として太鼓判を押しているというメッセージにもなります。銀行の審査は厳しいですから(笑)。

赤澤 上場企業でもないのにCSR 報告書をつくって良かったことは、報告書をつくり始めて、業務の受注が増えたことです。こんなに真面目にやっている、透明性が高い会社なんだ、ということが社会に伝わり始めたからだと思います。

河口 レポートが営業面で効果があることは、企業にとってとても大事なことですね。CSRレポートをつくるインセンティブになります。今エコというと、エネルギーがメインですが私が思うのは、エコの基本は循環型社会や物質循環の考え方で、それをもっと日本社会に浸透させなければならないということです。

今までの日本は贅沢になり過ぎました。賞味期限切れのものをリサイクルする、というのをみると、安心して安全で美味しいものが食べられるのは、裏ではこういうことがあるからだ、と伝えてほしい。その意味で、コカ・コーラウエストさんとの環境学習への取り組みも興味深いです。

赤澤 関西大学第一中学校(大阪府吹田市)で年に1回、中学2年生の生徒たちに、当社とコカ・コーラウエスト社で環境学習をおこなっています。まずは、地球温暖化の問題や埋立処分場がひっ迫していることなど地球環境の現状を示して、モノを循環させることの大切さを教えます。

そして、商品を買うときには陳列棚の手前から買っていくことが廃棄物を減らす環境に優しい行動なんだよ、というような消費者教育の観点から授業をしています。

生徒たちには、「一人ひとりの行動は小さなものかも知れないけど、皆が行動すれば大きな行動になって、無駄がなくなるのですよ」と教えています。

◆今後は消費者に責任も

河口真理子(かわぐち・まりこ) 大和総研環境・CSR調査部長

河口 子どもたちだけではなく、親にも教育してほしいですね。だいたいスーパーの牛乳売り場で後ろから牛乳を取るのはお母さんたちですから(笑)。その意味で、大手流通業とも連携して、廃棄されたものがどうなるのか、消費者教育をした方が良いですね。

ISO26000の7つの中核課題の一つに「消費者課題」がありますが、CS(顧客満足)をやれば良いと誤解している会社が多いです。そうではなく、「企業は消費者の権利を守ると同時に、消費者にも権利だけでなく持続可能な消費をささえる責任がある」というのが本意だと思います。

日本の現在の消費者教育は、「悪徳業者にだまされないための教育」ばかりのように見えます。悪徳業者から消費者の権利を守るのも重要ですが、消費者の権利だけではなく、社会に良いものを選択する責務もある。

ゴミの捨て方もしかり。行政や企業に要求するだけではなく、自ら主体的に考え行動する消費者を育てないと。いかに企業がエコになっても消費者が選択してくれなければ意味がないのです。ところでリヴァックスさんはISO26000にはどういう経緯で取り組まれているのですか。

赤澤 ISO26000に興味を持ち始めたのは、当社のCSRを定義し直そうとした時に、損害保険ジャパンCSR統括部長の関正雄さんや、地元のNPO法人こども環境活動支援協会(LEAF)などの協力も得て、ISO26000の勉強をしました。そこでISO26000のドラフト(草稿)を見て、「これは企業も含めた組織の持続可能性の戦略なのだ、これを自社の戦略として考えることが大事だ」と気付きました。

河口 戦略としてとらえられたのは正しいと思います。ISO26000を経営戦略の文脈でとらえる企業はまだ極めて少ないと思います。

赤澤 経営者が戦略として、ISO26000をとらえるのは重要ですね。企業だけではなく、あらゆる組織が、網羅的に、社会のニーズを整理する。それは企業や組織の存続に欠かせません。やらないともったいないくらいです(笑)。

河口 その通り、好むと好まざると関わらず、世の中が向いている方向を指し示してくれているのですから、こんな良い教科書はありませんよね。ISO26000を通じて、社会からの本当のメッセージ
を読み取れるか、あるいは「単なる外圧」ととらえるか。それは経営者の才覚次第ですね。

◆「ES」も「CS」も大事

赤澤 当社がCSRに積極的に取り組んでいるのは、社会の変化の中で、循環型社会とエネルギー問題をきちんととらえて、私たちのビジネスにしていきたいからです。私たちのビジネス領域では、社会のニーズからビジネスのシーズが出てくるのです。

つまり「マーケット・イン」ではなく、「ソーシャル・イン」なのです。ISO26000は、マルチステークホルダーダイアログが基本だと思っていますが、私たちの会社にとって、最も大事なのは社員です。当社では社員のことをパートナーと呼んでいます。

まずES(従業員満足)があって、パートナーが事業や様々な取り組みを通じて顧客や社会に対して貢献を行いCS(顧客及びコミュニティ満足)があるのです。

ピーター・ドラッカーも「企業は、社会や経済の許しがあって存在しているのであり、有用かつ生産的な仕事をしていると見なされるかぎりにおいて、存続を許されているにすぎない」と書いていました。

河口 赤澤さんは経営者として、コミュニケーションがお得意な印象ですね。このお仕事を通じて、行政や、企業、住民の方たちと、誠実にコミュニケーションをとられてきたからだと思います。CSR報告書の審査を長年させていただいてきました。私が抱いていた印象そのままの、企業ということが良くわかりました。これからも、産業廃棄物処理業界のみならず、日本企業をリードするような報告書を期待しております。

2012年5月8日(火)18:22

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