記事のポイント
- カネカなどの9製品が海洋生分解性プラマークを取得した
- 基準を満たせば、海洋生分解性バイオマスプラの表示も可能
- 使い捨てをやめない限り、海洋プラスチック汚染は解決しない
日本バイオプラスチック協会(JBPA、東京・中央)はこのほど、海洋生分解性プラスチックの識別表示制度の運用を開始した。すでにカネカやダイセルなどが認証を取得。一定の基準を満たしていれば「海洋生分解性バイオマスプラ」の表示も可能となる。期待がかかる一方で、使い捨てをやめない限り問題を解決できないとの意見もある。(オルタナ編集委員・栗岡理子)
■「海洋生分解性バイオマスプラ」の表示も可能に
JBPAが運営する識別表示制度には、「海洋生分解性プラ」のほかに、「バイオマスプラ」と「生分解性プラ」がある。いずれも、使用可能な添加剤などがあらかじめ登録されているポジティブリスト制を採用している。
プラスチックは原則として使用後に回収されなければならないが、ごみ集積場の不備や自然災害などにより、意図せず環境中に漏れ出すことも少なくない。
漏出したプラスチックは最終的に海洋に集まるケースが多いが、海は陸上に比べ微生物の密度が低く種類も異なるため、一般的な生分解性プラスチックでは海洋プラスチック汚染の抑制にはならない。
そのため、海でも生分解するものが「海洋生分解性プラスチック」として新たに認定され、「海洋生分解性プラ」の名称とマークの使用が認められる。このうち、植物などのバイオマス由来成分を25%以上含み、バイオマスプラ識別表示基準を満たしていれば、「海洋生分解性バイオマスプラ」の表示も可能だ。
すでに9製品が海洋生分解性プラマークを取得した。このうち5製品がカネカのPHBH、3製品がダイセルのCA(酢酸セルロース)、1製品がPHBHを利用した船場化成(徳島市)の包装資材だ。
■生分解性プラは「使い捨て」の言い訳にならない
生分解性プラスチックは微生物により分子レベルまで分解し、最終的には二酸化炭素と水になるといわれている。しかし、油断は大敵だ。欧州議会は2018年、「生分解性プラスチックは、使い捨てプラスチックを消費し続ける言い訳であってはならない」と決議した。
国連環境計画(UNDP)は、「生分解性」の表示があるとポイ捨てされやすいと指摘する。欧州のRethink Plastic Alliance(考え直そうプラスチック同盟)は、生分解性プラスチックであっても、人間や野生生物の健康を脅かすと主張する。
さらに、バイオマスプラスチックにパーム油や木材などを使用することを懸念する森林NGOは多い。バイオマスプラスチックは、使用する原料次第でむしろ気候変動を促進してしまうことがあるという。認証制度は、必ずしもすべての問題をカバーしているわけではないので、たとえ海洋生分解性バイオマスプラスチックであっても、使い捨て削減と使用後の回収が前提なのだ。